●クラウス爺さんのお手伝い ☆ ご褒美編
あげてばかりじゃ、サンタさんが不憫、自分達だけでもサンタさんの手伝いを!
そんな千早の思いつきで、千早と登真は急遽、市内のクリスマス関連イベント会場で、子供達にプレゼントを配るボランティアを行った。
意外にハードなその仕事、ボランティアを終えた登真は、モミの木のイルミネーションが見えるベンチで休憩していた。
休憩ついでに……寝てしまっている。
「……ナナ、寝ちゃったの?」
寝ている登真の後ろから、声をかけるのは千早。
「………」
登真はベンチに腰掛けたまま、目を閉じて眠っているようだ。
「もー、折角のホワイトクリスマスなのにー。……ナナってば、風邪ひくわよ!」
大声を出したというのに、登真はなおも反応しない。
「んもー……」
仕方なく千早は離れようとした……が、何かを思いついた。
千早はきょろきょろと辺りを見渡し、そして、ベンチの後ろに立つ。
そっと登真の肩に手を置き、その身をかがめ。
登真の頬に、千早の唇が触れた。
「……よく働いてくれたトナカイさんに、サンタからご褒美……なんちて」
触れたのはほんの少し。離れた唇からは、千早の恥ずかしそうな声がもれた。
じっと登真を見ているが、反応はない様子。
ベンチを回り込み、千早は眠っている登真の隣に座る。
それでも登真は本当に疲れているらしく、未だ目を覚まさない。
「ま、たまにはこんなのも良いわよね……」
「…………」
隣の登真が話す事はなかった。
くすりと微笑み、千早はしばらく、眠っている登真を眺めていようと思っていたとき。
「おーい、そこのサンタ姿のキミ達!! そこで何してるんだ?」
「え?」
千早が振り返る。
そこには、近所を巡回していた警官がいた。
「……ん?」
警官の声で登真は、やっと目を覚ました。
結局、二人は警官に怒られ、そのまま帰ることとなった。
警官は帰っていく二人を見送っている。
「んもー、ムードぶち壊しー」
ちょっぴり千早はご機嫌斜めだ。
「何か言いました?」
「な、何でもないの。気にしないで」
登真は少し考えていたようだが。
「では、早く帰りましょう」
二人は一緒に帰っていく。
大切な想い出を胸にしまいこんで……。
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