●〜 UNCHANGED † OATH 〜
そこは静かだった。
いや、静かになったというべきだろうか。
その場所に音も無く雪が降っていく。
白い雪は、この廃墟にいたものを被い尽くすだろう。
この戦いの後を、白く染めていくように、なにもなかったかのように……。
暁弥と弥杜は、先ほど手強いゴーストを倒したばかりであった。
足元には、そのゴーストだったものが転がり、その上には、白い雪が積もっていく。
「いい加減、俺に仕えるのはやめたらどうだ?」
瓦礫の上に座りながら、暁弥は言う。
「いえ、暁弥様は私の主、主人を守るのは当然の事です」
暁弥と背中合わせに座るのは、弥杜。弥杜は当然かのようにそう告げた。
「あいつの言葉を愚鈍に守り抜く必要はない。下らない役目に囚われず、好きに生きろと俺は言っている」
すかさず暁弥はそう言い放つ。
暁弥の言うあいつというのは、かつての弥杜の主であり、暁弥の愛した女性。
「では、私は既に好きにしています。自分の意思で、貴方に仕えています」
弥杜も言う。
「……っち、お前もあいつと妙な所ばかり似やがって」
どうやら、暁弥が負けたらしく。
「お気に障りましたか?」
思わず弥杜が訊ねるが。
「知るか……下らない事ばかりほざくな、黙れ」
暁弥の機嫌を損ねたようだ。
弥杜は「はい」と暁弥の言う通りにする。
静かな時が流れる……。
「それと……戦闘で身体が熱って暑苦い。上着はお前が持っていろ」
ばさりと、弥杜の肩に暁弥の上着がかけられた。
「あ……お心遣い、ありがとうございます」
思わず弥杜は感謝を述べる。
「俺は暑苦しいから持っていろと言っただけだ。勝手な解釈をするな」
「はい…ありがとうございます」
「……くどい…邪魔なだけだと言っている」
「……はい…」
暁弥から掛けられた上着。その上着は弥杜に暖かい温もりを与えた。
暁弥の優しさに触れることができたような、そんなほのかな想い。
弥杜はそっと瞳を閉じ、幸せそうに微笑んだ。
二人が廃墟でゴーストを滅ぼした日。
その日は奇しくもクリスマスであった……。
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