風凪・旋 & 天瀬・シオン

●雪降る聖夜の温かい一時

 ここは夜の公園。旋は、シオンと共に夜の公園に来ていた。
 銀誓館学園の冬服にマフラーと少し肌寒い格好で、シオンは降ってくる雪を見上げていた。
 その手には暖かいココアが握られている。
「うにゃっ!? つ、旋お姉ちゃん、どうしたの?」
 突然、旋がシオンの後ろから抱きついてきたのだ。
「いえ……シオンさん。寒くないですか?」
「寒かったけど……」
「そうですか……じゃあ、こうすれば?」
 旋はさらに自分のコートを開いて、後ろからシオンを包み込んだ。
 自分の体温と、コートとの温もりが暖かい。
「ふふふ。これで、寒くないですか?」
「うにゃぁ……でもこれじゃあ、旋お姉ちゃんこそ寒くない?」
 自分の事よりも、シオンは旋の事を気遣う。
「私ですか? 大丈夫ですよ。シオンさんがいますから」
 旋は笑って、そう答えた。
「でも……あ、そうだ」
 シオンは思いつき、それを実行に移す。
 そう、シオンは自分の首に巻いていたマフラーを旋に巻いてやったのだ。
「お姉ちゃんも、ココア一緒に持とうよ。そうすれば、温かいよね?」
「あ、ありがとうございます。……ええ、とても温かいですわ」
「よかった〜。あ、でもこれじゃ歩けないや」
 シオンの言う通り、後ろからしっかりとシオンにくっついている旋。これで歩くのは、ちょっと難しい。
 しかも頬が触れそうなくらいに、互いの顔も近い。
「じゃあ、しばらくこうしてましょうか? ……あ、シオンさん。ほら、雪ですわ」
「ほんとだ〜」
 ふわりふわりふわり。
 白い雪がゆっくり、ゆっくりと落ちてくる。
 一つ、また一つと、落ちていく雪は、地面を少しずつ白く染めていった。
 二人の吐く息はいつの間にか白く。

 チュッ。

 旋の頬に暖かいものが触れた。
 それは、ほんの一瞬。
 けれど、旋にはそれがなんなのか、すぐに分かった。
 シオンの唇。
 触れた頬が、なんだかくすぐったくて、暖かくって。
「えへへ……メリークリスマスだね♪」
 にこっと微笑むシオンに、旋は頬を染めながら、笑顔で応えた。
「ええ、メリークリスマスですわ♪」




イラストレーター名:ハウンド