●二人のクリスマス?〜屋台制覇中〜
千歳の足取りは軽い。
るんたったるんたった♪
それはまるで、弾むように。
千歳の向かう先にあるのは、賑わっている商店街。
クリスマスということで、なおさら賑わっているように見える。
「商店街でお祭りやってるみたいだし、そっちに行ってみよ〜♪」
というわけで、商店街を目指して歩いていた。
ふと、見知った誰かを見た気がした。
いや、すぐそこにいる。
「高城君、やっほ〜♪ 何してるの?」
「月守さん? 奇遇ですね」
千歳が声をかけたのは、蒼。
「何をしているといわれると、ちょっと返答に困りますね……」
ただ単に暇だったから、ここにきた蒼。
けれど、気になる相手に会えたのだから、幸運というべきかもしれない。
「うにゃ、暇なら一緒にどうかなっ?」
「喜んでお供しますよ」
「それじゃ、一緒に行こ、行こ♪」
千歳に導かれるままに蒼は、賑やかな商店街へと足を踏みだした。
「美味しそうな屋台が一杯あるよね〜♪ おじちゃん、ソレ10個頂戴っ♪」
「たくさんありますけど、大丈夫ですか?」
思わず蒼が訊ねる。
「うん。これくらい、いっつも食べてるから平気だよ」
貰ったホットドックを両手に持ちながら、千歳はぱくんぱくんと、楽しげに食べている。
その隣で蒼は呟く。
「やはり、こういう役回りでしたか……」
蒼の役目、それは持ちきれない祭りの食べ物を、運ぶ事。
「うにゃ、アレも美味しそう〜♪ 早く行こっ♪」
いや、今はため息を吐いている暇などない。それに。
「でも、まぁ役得かな」
微笑む千歳の姿を見れるだけでも、蒼にとって充分であった。
「あ、向こうに屋台発見です。行きましょう!?」
「うん、行く行くっ!」
二人はまた、駆け出した。
気が付けば、両手にたくさんの食べ物が抱えられていた。
ホットドックはもちろん、焼き芋、鯛焼き、たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、クレープ、それにドネルケバブ。いや、他にもたくさんある。
「高城君もはいっ♪」
千歳は、その中でもお気に入りの一品を蒼に渡した。
と、そこで気づいた。今、蒼は両手が塞がっている事に。
「はい、頂きます」
それでも蒼は、手を使わずに口を使って、器用にもらった物を平らげた。
半分、包みに入っているのにも関わらずに、だ。
「うにゃ、器用だね」
びっくりした顔で千歳は蒼を見ていた。
ふと、思い出したかのように千歳は隣にいた蒼を見た。
「高城君、メリークリスマス♪」
「メリークリスマス、月守さん」
蒼も楽しそうに微笑んだ。
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