●光の樹に見守られ
銀誓館学園に伝わるジンクスの一つに、宿り木にまつわるものがある。
イルミネーションが灯されるまでに、相手に許可を貰った上で、キスをする。
他にもいろいろあるが、とにかく、その特別な宿り木の下でキスをした者達は、永遠に結ばれるのである。
そして、シンクレアと初雪は、見事そのジンクスを果たした。
大切な告白と共に、幸せなキスを交わして。
周りの木々に色とりどりのイルミネーションが点灯される。
「わあ……」
シンクレアは宿り木に灯るイルミネーションに驚き、瞳を細める。
「すっごく綺麗だね」
「はい、クレアさん」
初雪も周囲に灯っていく明かりに目を奪われていた。
シンクレアは隣にいる初雪を見ていた。
まだ明かりに目を奪われたまま、笑顔を見せている初雪。
ふと、シンクレアは動き出す。
「うリャっ」
「ふ、ふわっ?」
初雪の不意を付くかのように掛けられたのは、シンクレアの暖かいマフラー。
今、二人はマフラーでも繋がっていた。
「……ウム♪ これで暖かデス♪」
満足げな笑みを浮かべ、シンクレアは初雪の手を握り、そっと肩を寄せた。
初雪も落ち着きを取り戻し、そっとシンクレアに寄り添う。
「……僕も、心までぽかぽかなのです」
初雪はもう一度、隣にいるシンクレアを見た。
シンクレアの笑顔の向こうで、先ほどの二人のキスシーンが思い浮かぶ。
(「永遠の愛を……誓ったの、ですよね」)
初雪は、とたんに頬を赤く染めた。恥ずかしくてシンクレアの顔がまともに見れない。
視線を変えようとしたとき。
「来年も、一緒に、ね!」
にっこりとシンクレアは初雪に微笑んだ。
初雪は結局、視線を逸らす事ができなかった。
いや、しなくてもいい。
少し恥ずかしい思いをするだけなのだから……。
「はい。来年も、そのまた来年も。ずっと……ずっとずっと一緒、なのです」
心を落ち着けて、初雪はそう告げた。
また来年、二人でこの場所に来れる様、願いを込めて……。
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