●サンタさんは、いるのです!
『サンタなんて、いないんだよ』
その言葉は、サンタクロースを信じきっていたルルティアの心を酷く傷つけた。
けれど、その日。
奇跡は起きた。
「ふう……」
これで、何度目だろう。
ルルティアは深いふかーいため息をこぼしていた。
今まで信じていたものが、第三者の手によって、全否定されてしまったのだ。
その心の傷は、とても深いに違いない。
「メリークリスマス♪」
そこに現れたのは、小さな小さなサンタクロース。
赤いサンタ服を身に纏い、その手に素敵なプレゼントボックスを持っている。
だが、そのトレードマークのお髭はなかった。
若いサンタクロースなのだから、仕方ないかも?
いや、それよりもルルティアは、驚きと喜びでいっぱいだ。
「サンタさん、若いですね!!」
そういうルルティアの声は少し大きく感じる。
「こ、ことしはサンタさんが風邪引いたんです! お、お手伝いしてるんです!」
「!!!」
小さなサンタが口にした言葉は、ルルティアの心をぐっと掴んだ。
俗に言う、つかみはOKというものである。
だが……だがしかし。
「こんな小さなお子さまから、金品を頂くことなどできません!!」
ちょっと名残惜しい気持ちもあるが、ルルティアはぐっと堪えてプレゼントを返そうとする。
そう、ルルティアにとって、小さな子からプレゼントを貰ってはいけないのだ。
しばし、そのルルティアの言葉に、小さなサンタはショックを受けているようであったが。
「いや、その、ほら、サンタさんからなので!!! どうぞ!!!」
そう言って、小さなサンタは逃げていった。
猛烈なダッシュで、ずばーんと。
「お……おおっ……」
小さなサンタが去った後。
ルルティアは目をキラキラと輝かせながら、プレゼントを見ていた。
『メリークリスマス! サンタのつかいより ルルへ』
そんなカードも添えられていた。
すぐさま、ルルティアは動き出す。
「さ、サンタさんは……サンタさんはいるのですっ!!」
その様子をそっと影から見守る者がいた。
そう、さっきの小さなサンタこと、暁だ。
「おこさまって言われちゃったけど……でも、ルルが元気になったから、いいよね♪」
暁は嬉しそうに微笑む。
小さなサンタが贈る、素敵なプレゼント。
それはルルティアに、プレゼントだけでなく、とびきりの笑顔まで贈ったのであった。
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