●始まりは一杯の紅茶から?
今日はクリスマス。
ラムレスは、朝からそわそわと落ち着かない様子であった。
「バタフライ」という喫茶店での手伝いも控えている中、それでも気になってしまうのは、やはり、事前に彼との約束をしていたからだろう。
そう、ラムレスの銀誓館学園の入学のきっかけとなった、暁文との約束を。
昼過ぎに暁文は店にやってきた。
店内が可愛らしいクリスマスの飾りつけでいっぱいだったために、少し居づらそうに見える。
ラムレスは急いで、暁文に暖かい紅茶と美味しいお菓子を用意した。
「お、お待たせしましたわ」
ラムレスは持ってきたものをテーブルに並べ、暁文のいるテーブルに着いた。
「店はいいのか?」
「あ、はい……。もう落ち着きましたので、少し休憩ですの」
「そうか、なら遠慮なく」
さっそく紅茶を飲み。
「うん、美味い……これも貰っても良いか?」
お菓子も食べていく。
ラムレスはその暁文の様子を、どきどきしながら見守っていた。
目の前には、一目ぼれした相手がいる。
きちんとまだ想いを伝えてはいないが、それでもこうして一緒にいられるのが、何より嬉しい。
嬉しすぎて嬉しすぎて……。
「ラムレス、俺の顔に何かついてる?」
「あ、いえ……その、いつ見ても素敵だななんて……」
「嬉しいな、ラムレスにそういわれると」
「え?」
「……実はさ、俺、ラムレスのこと、前からずっと好きだったんだ……」
「ラムレス?」
「あ、その、嬉しいんですのっ!」
突然、暁文に声を掛けられ、妙な返答を返してしまうラムレス。
ちなみに先ほどの告白うんぬんはラムレスの妄想だったり。
「何が嬉しいって?」
「あ、いえその……」
そして、やっと気づいた。うっかり妄想の告白に答えてしまった事……つまり、間違えた発言をしてしまった事に。ラムレスは真っ赤になりながら、しどろもどろに言葉を繋げる。
「暁文さんが……来てくれて嬉しいと思いましたの……」
俯きながら、自分の紅茶を飲み干すラムレス。
暁文は笑顔で言う。
「俺もだよ」
「え?」
思いがけない言葉はなおも続く。
「そうだ、今度は何処で待ち合わせする?」
「え? ええ?」
「このお茶のお礼、しなきゃなってさ」
暁文の言葉にラムレスは嬉しくて驚いて困惑しながらも答えた。
「暁文さんの好きな所で……」
暁文は心の中で微笑んでいた。
(「相変わらず、ラムレスは可愛いな」)
ラムレスのくるくる変わる表情を眺めながら、暁文は笑みを絶やさずにいたのであった。
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