●ちょっと気になる存在
気が付くと、辺り一面銀世界に変わっていた。
そう、ホワイトクリスマスだ。
天気予報で雪が降ると聞いていたが、こんなに降るとは誰が予想しただろうか?
ちょっと帰り道が心配だが、今は。
今はこの、銀世界を楽しもう。
夢美はゆっくりと歩いていく。
さくさくさく。
雪を踏みしめ、夢美が歩いた後には、くっきりと白い足跡が残る。
それが、少し嬉しい。
「ホワイトクリスマスになりましたね」
「そうですね、ちょっと……驚きました」
嬉しそうな夢美の声に、将弘は頷いた。
「何だかこういうのって、どきどきしますね……ワクワクするというか……」
ちょっと考えて、夢美は結論を導き出した。
「あ、クリスマスだからですね、きっと。こんなに嬉しいのは」
そう言って、将弘の顔を見る。
私の方など見ていないと思っていた夢美。
だが、将弘は優しげな視線で夢美を見ていた。
どくん。
夢美は思わず顔を逸らしてしまった。
いつの間にか目の前には、銀色の雪を被ったクリスマスツリーがあった。
どうやら、ツリーのある場所まで来てしまったようだ。
その綺麗なツリーに夢美は感嘆の声を上げる。
「わあ……鳥井さん、見てください。ツリーがこんなに綺麗です……」
手をあわせて夢美はずっと、ツリーを見上げていた。
「本当ですね。やっぱり雪があると赴きも違いますね」
そして、将弘は尋ねる。
「手袋つけていないようですが、寒くありませんか?」
「これくらい大丈夫……」
将弘はそっと、夢美の手に、自分の手を重ねた。
ずっとポケットに入れていた所為か、とても暖かい。
「ありがとう、鳥井さん」
「どういたしまして、水瀬さん」
二人は微笑み、もう一度、ツリーを見上げた。
暖かい温もり。
その温もりは、ずっと続いているかのように感じられた。
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