東堂・琢己 & 鷹來・遥姫

●Like or Love? Only the god knows.

「うわー、あれ可愛いなぁ。あ、あっちのお菓子、とっても美味しそう!」
 イルミネーションに彩られたショーウインドウを覗き込みながら、遥姫は楽しげに、でも悩ましげに街角を歩いていた。
 あれもこれもそれも、とーっても気になる。
 どうしよう?

「……ハル、目的を忘れてませんか?」
「えー、何のこと? それよりも、どのお菓子買って帰ろうか?」
 静かにツッコミを入れる琢己に、遥姫はあっけらかーんと返して、うずうずわくわく、お菓子の山に向けた視線を、あっちへこっちへ行ったり来たり。
「……」
 本来、こうして買い物に来たのは、結社でのクリスマス会用のプレゼントを買うため、だったのだが。彼女はすっかり、その事を忘れているようだ。
「……で、プレゼントは何がいいと思う?」
「……とりあえず、センスのいい物買っておかないと、みんなに怒られると思うよ」
 とりあえず聞かなかった事にして琢己が首を傾げると、遥姫むかっと頬を膨らませ、それだけアドバイスする。
「うーん……」
 そう言われても漠然としていて、これというイメージは浮かばない。
 とりあえず、小物の類が無難だろうと決めると、あとは代わりに選んで欲しいと遥姫に頼んだ。

 カランカラン。 「……花より団子ですか、ハルは」
「な、何それ!? 違う違う、絶対に違うよ! 琢己先輩はハルのことを誤解してる!」
 ベルを鳴らして店を出ながら、琢己は彼女が抱えた袋を見る。
 ぶんぶんと首を振る遥姫だが、彼からの視線は、それを全く信じていない事を物語っていた。
「もー!」
 そのまま歩き出した琢己を追いかけ、頬を膨らませて。……くいっ、と遥姫は彼の袖を引く。
「……ねえ先輩。もう帰っちゃうの? ……って、なんで笑ってるのっ!?」
 上目遣いで見つめた瞳が、チラっと向けられた先には、ケーキ屋がある。その様子に、もう堪えきれないといった様子で笑いながら、ようやく「沢山食べると太るから、少しだけですよ」と告げる。
「ハル、太らないもん……た、多分」
 そう視線を逸らしながらも、正直者の遥姫はウインドウ前で瞳をキラキラさせて、ブッシュドノエルを選ぶ。
「……これが少し?」
「細かいことは気にしたらダメ。琢己先輩も一口食べる?」
 ケーキボックスを抱えた遥姫に、琢己は首を振る。
「噛みつかれそうだから遠慮します」
「そんな事しないよ! ハルを何だと思ってるのさ!」
 言いながらも、決してケーキは離そうとしない遥姫の様子に、琢己はたまらず思う。
(「愛いヤツめ」)
 そのまま伸ばした手で彼女を抱きしめれば、その顔が瞬時に真っ赤に染まるのが分かる。
「た、たくっ……!?」
 口をぱくぱくさせる遥姫の様子に、琢己はくすりと笑みを広げるのだった。




イラストレーター名:トシヤ