●来年もまた…
終わりかけのクリスマスパーティーに、滑り込みで参加した二人。
パーティーを楽しむ時間は、ほんの僅かであった。
パーティーを終え、二人は共に家路に向かう。
「あんまり……ちゃんと参加出来なくて、ちょっと残念だった」
その帰り道、翔は思わず残念そうな声を出した。
「……また来年、デスね。クリスマスも」
「うん」
励ますようなそのアザの言葉に翔は頷いた。
実は今日は、翔にとって、銀誓館学園で迎える初めてのクリスマスでもあった。
本当は、皆ともっと楽しみたかった……。
それにせっかく、アザを誘ったのにもかかわらず……。
「あの、さ……アザ」
俯きながら、翔はアザに声を掛けた。
「ハイ?」
「……やっぱ、なんでもない……」
「???」
アザは不思議そうに翔を見ている。
言えなかった。
ただ、『来年も一緒に……』と言いたかっただけなのに。
そう、いつもそうだ。
普段から、ありがとうもごめんも、言いたい言葉は沢山あるのに、上手く伝えられない。
素直じゃない、自分の性格が嫌になってくる。
大切だから……一番信頼しているから……余計に照れくさくて……。
「翔」
アザは、しばらく無言だった翔を呼ぶ。
「ん?」
隣を見ると、さっきまでぼんやりと空を見上げていたアザの視線が、自分へと向けられていた。
「来年も一緒にパーティー行きましょう」
「……っ」
あっさりと言いたい事をアザに言われて、面食らう翔。
「ね?」
「ん……別に……行ってやらなくも、ないっ」
照れたように頬を染めながら、翔はそう言った。
「ハイ! 約束デス!」
アザの言葉が嬉しいのに、思わずいつものクセでツンとしてしまう。
実はその翔の性格をアザは、よく理解していた。
言葉は素直じゃなくても、翔は態度がとても素直だと、アザは翔を見つめはにかむ。
「………ありがと」
小声で翔は礼を述べる。
「? 何か言いました?」
「何でも……メリークリスマス」
「はい……メリークリスマス、デス……翔」
二人のクリスマスは、こうして幕を下ろしたのであった。
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