媛苑・蒼雅 & 媛苑・基青

●初めて尽くしのクリスマス!

 いっつもは、お父さんと一緒にお出かけしてたけど。
 今年は違う。ちょっと特別な日。
 だって、今日はクリスマスなんだって!

「お兄ちゃん、お兄ちゃん、どうかな?」
 蒼雅は元気良く、兄である基青の側にやってきた。
 愛らしい赤いサンタクロースの服。本物と違うのは、そのサイズが小さく、可愛らしいスカートになっている事だろうか。
「ああ、とっても似合うよ」
「ありがと、お兄ちゃん♪」
 ふわりとスカートを広げて、お姫様のように礼をする蒼雅。その姿に基青も思わず笑みを浮かべる。
「今日はクリスマスだから……えっと……何をするんだっけ?」
「そうだな……ツリーを飾ったり、美味しいケーキを作ったり……」
「それにプレゼント、だよね!!」
「そう。正解」
 元気良く答える蒼雅の頭を、基青は優しく撫でてやる。
「さて、まずはツリーを飾らないとな」
「あ、私も手伝うよっ!!」
「それじゃ、よろしく。小さなサンタさん」

 蒼雅が張り切るのには、理由がある。
 そう、蒼雅がクリスマスをやるのはこれが初めて。しかも兄と一緒のクリスマスを楽しめるということで、かなり張り切っているのだ。
 暖炉の部屋にあるツリーを飾るのも、とっても頑張っている。
「よいしょ、よいしょっ!!」
 小さな背を脚立で補いながら、精一杯背伸びして飾りつけていく。
 こっそり東洋の龍も飾ってあるのは、ご愛嬌?
 基青も手伝って、順調に進み……。
「あ、あれ?」
 蒼雅は気づいた。自分の持っている飾りを入れているバスケットに、ツリーのてっぺんを飾る、大きな星がない事に。
「お兄ちゃん、星とって〜!」
 どうやら、お姫様は星を所望しているらしく。
「やれやれ、仕方ないな」
 そう呟きながら、基青は笑顔で大きな星を差し出した。
「はいはい、どうぞ」

 初めてのクリスマスは、まだまだ続く。
 翌日、基青の用意したプレゼントに喜ぶ、蒼雅の姿があった……。




イラストレーター名:ソガ