茅咲・歌織 & 鎖天・契

●花咲く迷宮の憩

 そこは色とりどりの花達が、ここに来る学生達を出迎えていた。
 花壇に植えられた草花は、冬という寒い時期にも関わらず、強く逞しくその花を咲かせている。
 その冬の花に囲まれた迷路をくぐった先には、暖かい休憩所が設けられていた。
 温かい飲み物、温かい防寒具、暖かい暖房器。
 そう、二人っきりの暖かい時間を彩るように。

「冬の花、綺麗だったね」
「ああ、そうだな」
 歌織の言葉に、契は頷く。
 契の手には暖かいココアとコーヒー、それに1枚の毛布を腕に掛けていた。
「ココアでいいか?」
「うん、ありがとう」
 契からココアを受け取り、さっそく歌織はそれを口に含んだ。
「暖かい……」
 湯気の出るココアを嬉しそうに見つめる歌織。
 契は持ってきたコーヒーをテーブルに置き、毛布を広げた。
 ふわりと、歌織と契とを包むかのように毛布をかける。
「寒くはないか」
「北国育ちだから大丈夫ー」
 にこっと微笑む。
「それに暖かいココアもあるし」
「そうか」
 毛布に包まりながら、契は自分の持ってきたコーヒーを口にした。
「ねぇねぇ、契。見て、ここから見るのも綺麗だよー」
 休憩所の窓から見える、冬の花。
 歌織はそれを見て、嬉しそうな声をあげた。
「本当だな。今度は迷路を通らず、すぐここに来るか?」
「え、それはダメだよー。反則ー」
 そういう歌織に契は笑い出す。
「冗談だよ」
「もう、契ったら」

 飲み物も無くなり、二人はそっと寄り添うように毛布に包まっていた。
「………ん?」
 ふと、契の肩に重みが掛かる。
「歌織?」
 気が付けば、歌織はすやすやと眠っていた。
「ここで寝ると風邪引くぞ?」
 小声でそう呟いても、ぐっすり寝ているらしく、動く様子も無い。
 契はくすっと笑うと。

 歌織の額におやすみのキスをした。

「あっと、これも忘れるところだった」
 思い出し、契は歌織に渡すプレゼントを取り出した。
 そして、寝ている歌織の膝の上にそっと置いておく。
「メリークリスマス、歌織」

 休憩所での二人だけの時間。
 その甘い時間は歌織の目が覚めるまで続いたのであった。




イラストレーター名:Miyu