●暖かいクリスマス♪
遠くで賑やかな声が聞こえる。
ここは外。
少し肌寒く、人気が少なく、静かであった。
ふと、顔をあげる。
そこには、煌びやかに輝くクリスマスツリーが見えた。
そう、今日はクリスマス。
特に今年のクリスマスは……。
時間は少しさかのぼる。
「関お姉様!」
長く緩やかなウェーブのかかった金の髪が揺れた。
「ピナコ、どうかしたか?」
部屋でまったり過ごしていた銀麗のところに、ジュゼッピーナが飛び込んできたのだ。
「どうかしたのかって……ダメですわ! こんなところにいては」
「ん?」
「せっかくのクリスマスですもの、さあ、一緒に出かけませんと!」
少々、強引だが、それもまた一興。察するにジュゼッピーナの方がクリスマスパーティーに参加したいという事だろう。
「ちょっと待て、ピナコ」
「はい、何ですの、お姉様」
銀麗は悪戯っぽく笑みを浮かべる。
「せっかくだから、きちんと着替えていこう。……そうだな、『アレ』を着よう」
「『アレ』?」
「そう、暖かい『アレ』な」
待ち合わせをして、二人はパーティーに参加した。
お揃いの淡い色をしたセーター。
嬉しそうにはしゃぐジュゼッピーナの様子を、銀麗は楽しげに見つめていた。
「お姉様、外に行きますわよ」
「外?」
「ふふふ、内緒ですの♪」
きょとんとする銀麗の手を引き、ジュゼッピーナは、ずんずんと歩いていく。
「お姉様、あれを見てくださいですの!」
辿り付いた場所、そこは煌びやかに飾り付けされたクリスマスツリーであった。
気が付けば、陽も傾き、ツリーから放たれるイルミネーションは淡く優しい光を放っていた。
「さっき、会場で教えてもらいましたの」
「……綺麗だな」
銀麗は僅かに微笑み、ジュゼッピーナを見る。
「ええ、とっても綺麗で、素敵ですわ」
賑やかな会場と比べて、外は少し肌寒く、静かだった。
聞こえるのは、寒さを伝える風の音と、自分の心臓の音。
何故か、どきどきと早く波打つのは、きっと、目の前のツリーが綺麗な所為。
「お姉様、見てっ!」
空を指差し、嬉しそうなジュゼッピーナの声が響いた。
「雪……?」
「今日は、ホワイトクリスマスですわね、お姉様」
「ああ、素晴らしいホワイトクリスマスだ」
二人は飽きる事無く、長い間ツリーと雪を眺めていた。
繋いだ手の温もりや、今日見たこと、感じた事は忘れないだろう。
何故なら、義兄弟の契りを交わした、愛おしい存在が側にいるのだから……。
| |