草凪・飛鳥 & 古神・愛

●−雪降る夜に祝福を−

「はっはっは、クリスマスに正装して、ゴーストタウンに2人で突撃するなんて……」
「……そうはいないだろうな」
 そう笑い合いながら、愛と飛鳥は雪の上に座り込んだ。
 さくりと、雪の音が鳴る。ひんやりと、冷たい雪の感触がある。
 でも、構わないとばかりに、背中合わせで2人は寄り添う。
 雪が降る廃墟での戦いを終えて、ありこちボロボロになっても、こうして互いに手を繋げば……それは全て洗い流されて、落ち着けるような気がする。
「…………」
 愛は軽く飛鳥の背に寄り掛かると、瞳を閉じた。
 そんな彼女の体を、飛鳥はただ無言で静かに受け止める。

 自分達はまだ、『世界』を知らない。
 2人とも、これまで同じように、戦いながら生きてきたから、知っている世界は、とても狭い。
 だから、こんな風に……不器用にしか、過ごせない。
(「……けど」)
 今は、それだけでも十分じゃないかと、2人は思う。
 だって……それで、幸せなのだから。
 こうして、ただ手を触れ合わせているだけでも、本当にとても幸せで……。
 時は止まらないと知っているのに、それでも、それを望んでしまうのだ。
 ……それ以上は、相手を抱きしめようとしただけでも、全身が強張ってしまうぐらいで。
 2人の関係は、恋と呼ぶには、あまりに稚拙かもしれないけれど。
 でも、と、愛も飛鳥も思う。
 こんな風に、幸せだと感じられる相手がいること。それだけで本当に十分なのではないかと……。

「……雪、まだまだ降りそうだな」
「そう、だな……」
 互いに、灰色の空から落ちる白い雪を見上げながら、思う。
 今ここに、ささやかでも確かな、幸せがある。
 それを大切にしたいと、思う。
 だから……。
(「改めて、誓う」)
(「……この未熟な剣は、1人の為だけに、と……」)
 背中越しに、互いのぬくもりを感じ合いながら。そう、2人は心の底からの思いを新たにし……。
 今はただ、ここにある幸せを噛み締めるのだった。
 2人、寄り添いながら、静かに……。 




イラストレーター名:ゆく