小波・逢 & 真神・真

●聖夜の荒劇―今宵は貴方と………―

 気持ちの良い昼下がり。
 逢は、赤い帽子を揺らしながら、彼を待っていた。
「………まだかな?」
 待ち合わせは外。
 少し肌寒く感じる。
 けれど、それよりも……逢はこれから始まる素敵なイベントに胸を躍らせている。
「……まだ、かなぁ?」
 もう一度、逢は辺りを見渡した。

 走る者がいる。
「はぁ、はぁ……」
 真だ。そう、逢が待っていたのは真。今、真は逢のいる場所へと急いでいた。
 急がないと、急がないと時間に遅れてしまう。
 真は自分の時計を見て、時間を確認する。
 僅かに笑みが零れた。

 大丈夫、これならギリギリ間に合うから……。


「あっ、こっちこっちっ!!」
 逢は息を切らしてやってきた真に手を振った。
「待ったか?」
 切れる息を整えながら、真がやってくる。
「ううん、今きたところ……」
 そう言って逢は、はにかみながら微笑んだ。
 ちょっぴり待ったけど、そんなことはどうでもいい。
 こうして、真と逢えたのだから。
「今日こそ……今日こそは……」
 逢は頬を染めながら、そう呟き。

 じゃきんっ!!

 逢は後ろ手に持っていた物を、突き出した。
「今日こそは、アンタを料理してやるよっ!!」
 あ、明らかにプレゼント……ではない。逢の手には鎖鎌が握られていた。
 手入れに抜かりなく、その鎌の刃は、美しく光を跳ね返す。

 じゃきんっ!!

 真も同じくその手に持っていた物を、突き出した。
「おぉうよ…返り討ちにしてやんぜ!」
 真の獲物はナタ。見て分かるほど、切れ味最高なナタだ。

 お互い、にっと笑みを浮かべて。
「「うおおおおっ!!」」
 激しく回される鎖鎌。
 巧みに降ろされるナタ。
 果たして、彼らの戦いの行方はっ!?

 それは二人の心の中に…………………………たぶん。




イラストレーター名:山本バニラ