神城・出雲 & 九十九守・大樹

●甘い銀世界

 二人は噂の宿り木を探していた。
 その宿り木の下で告白すると、永遠に結ばれるという。

「結局、宿り木は見つかりませんでしたわ」
 その残念そうな出雲の言葉に、大樹は苦笑を浮かべる。
「また来年、見つければええわ。そうやろ?」
 そう励ます大樹。出雲は笑みを浮かべる。
「そうですわね、大樹様」

 宿り木の下で想いを伝える事は出来なかったけれど。
 こうして、二人っきりでいられるのなら……。
 それに、既に出雲は大樹から、思いを告げられていた。

 好きだという、その告白を………。

 室内でのパーティーも大詰めを迎えていた。
 ちらりほらりと、外に出るカップル達を見かける。
「大樹様?」
 楽しんでいる大樹に出雲は声を掛けた。
「なんや、どうしたんや?」
 優しい響きの声がかけられる。
「ちょっと二人で外を歩きませんか?」
 大樹は少し驚きながらも。
「ええよ。けど、暖かい格好せなあかんやろ?」
 出雲はその大樹の言葉に、嬉しそうに微笑んだ。

 そしてまた、外に出た。
 二人の吐く息が白く見える。
「大樹様、もう一度、お聞かせ下さい。貴方様は私の事をどう思って下さっているのですか?」
 宿り木を探しているとき、大樹は堂々と告白していた。
 だからこそ、もう一度。
 今度はイベントではなく、静かなこの場所で聞きたかった。
「な、何、言うんやと思ったら……」
 大樹は周囲に誰もいないのを確認し、頬を染めてもう一度答える。

「……好きや……出雲クン」

 とたんに出雲は嬉しそうに微笑む。
「ふふ、とても嬉しい。胸の奥が暖まるような……」
 ゆっくりと大樹に近づき、腕を回した。
「いいいっ!? い、出雲、クンっ!!?」
 ぎゅっと顔を近づけ、出雲はクスクスとまた微笑んだ。
「結社に戻れば皆居ますからね。今だけ私と甘い、甘いこの一時を……」

 雪がまた降り出した。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 雪が降る中、二人は二人だけの時間を過ごした。
 もちろん、結社のメンバーには内緒で……。




イラストレーター名:たぢまよしかづ