●「あちらあちら♪」「睦美さん、張りきりすぎです…」
クリスマスイヴのこの日、銀誓館学園の各所で、クリスマスパーティが開かれていた。
「アクアちゃん、あちら見てみません?」
そう振り返る睦美もまた、あちこちのパーティを回っている最中だった。アクアリースの手を引っ張りながら、楽しそうに歩いていく睦美だが、
「睦美さん、はやいですよ……」
「あらっ、ごめんなさいませね。アクアちゃんが一緒だと思うと、つい嬉しくて♪」
アクアリースの言葉に謝りながらも、睦美はそう顔をほころばせる。
だって、駄目元で誘ったアクアリースが頷いてくれて、こうして一緒の時間を過ごせている……。
嬉しくないはずが無い、てゆーか幸せ絶頂に決まっている!
「いえ、いいですけど……」
何の臆面もなく言う睦美の姿に、アクアリースの方が照れてしまうくらいだ。睦美は、今度はアクアリースに合わせて歩く。
「あら? アクアちゃん、あそこ面白いお菓子があるみたいですわよ」
そうして珍しい物を見かけると、またアクアリースを誘う。
といっても、物が何であるかはさほど重要では無い。睦美はただ、それを会話の種として使いたいだけなのだから。
「まあ、大きいケーキね」
「ほんとにですわー。ちょっと寄って、分けてもらってみます?」
その繰り返しで、睦美はとっても幸せな時間を過ごす。
それはもう、今すぐ時間なんて止まってしまえ! と叫びたくなるくらいに。
それはもう、「アクアちゃん……♪」と、恋する乙女のらぶはーとを撒き散らしちゃうくらいに。
「あぁ……あっという間ねー……」
ふと腕時計を見て、睦美は残念そうに呟いた。
睦美はこの後、とある任務を果たす為に、行かなければいけないのだ。
「残念だけど時間です、もう行かなくては」
しゅーんとアクアリースへ向き直ると、睦美は名残惜しそうに、彼女にきゅっと抱きついて。
その頬に、ちゅっと可愛らしいキスをする。
「睦美さん……頑張ってくださいね」
するとアクアリースは、そうエールを贈り……睦美の頬に、ちゅっと、お返しのキス。
「!!! ええ、それはもちろん。私、頑張ってきますわっ♪」
その途端、睦美のテンションは一気にMAX。
そりゃあもう、十分に十分すぎるエネルギーを得て、可愛らしく手を振ってくれるアクアリースに見送られながら、約束の場所へ駆けていく。
「もうっ、もうっ、アクアちゃんたら〜っ♪」
思わず顔がニヤけるのを止められない。
あまりの嬉しさに、きゃーきゃー言いながら全力疾走。
(「いつか……いつかはきっと、頬じゃなくて……♪」)
くちびると、くちびるに、ちゅって。
できたらいいな、なんて考えちゃう睦美なのだった。
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