黒髪・キリコ

<土蜘蛛戦争 侵攻開始!>


 銀誓館学園の学生達が乗った、貸切バスが奈良県の土蜘蛛の結界の近くで停車する。
 その時期はずれの修学旅行のように連なった幾台ものバスから降り立ったのは、小学生から高校生までの学生達。
 勿論、彼らは観光目的でやってきたのでは無い。
 メガリス、瑠璃硝子の蜘蛛の破壊効果『無限繁栄』によって現代に蘇った土蜘蛛の軍勢から、この世界を護る為に集ったのだ。

 到着した貸切バスの集合場所には、近隣都市に前泊して公共の交通機関を利用してやってきた学生達が、次々と合流してくる。
 そして、その人だかりのその中心に、不思議な金属で作られた巨大な剣が突き立てられた。
 魔法帝国マケドニアの大王が所持していたとされるメガリス、大帝の剣……。この剣を破壊する事で、銀誓館の能力者は『生命賛歌』の力を得る事ができるのだ。

「皆の意志の力を、このメガリスに合わせるのです」
 コマンダーの一人、黒髪・キリコ(高校生霊媒士・b03810)の言葉に答えるように、能力者達は大剣へと手をかざす。
 そして翳された手が互いに繋ぎ合わさり、大帝の剣を中心に力のうねりを渦として表現していく。

 そして、一瞬の閃光。
 能力者達が、目を開ける事もできない光が剣より放たれ、次の瞬間、彼らの体の内から、偉大なる生命の賛歌が湧き上がってきた。

「今なら、どんなことでも出来そうだ」
「あぁ、土蜘蛛だろうとなんだろうと倒してやるぜ」
「俺たちは、この世界を護る為に戦うんだ」
「必ず勝つと書いて、必勝。それ以外に未来は無い」

 力強き言葉は、身に溢れる力の賜物なのか……。
 生命賛歌を身に纏い、そして彼らは意気揚々と戦いへと赴くのだ。

 既に、先に到着していたサーチャー達を中心に、侵攻開始ポイントで遭遇した蜘蛛童は駆逐してある。
 ここから先は、西ルートと南ルートに分かれて、それぞれに最終目的地である『女王の領域』へと向かう事になるだろう。

 西ルートは『新町地区』へ。
 南ルートは『玉出地区』へ。

 イグニッションをした能力者達は、生命賛歌の歌声と共に、自分達の進むべき方向へと歩を進めたのだった。