<リプレイ>
●結社企画巡り 〜グルメストリート編
皆さんこんにちは、藤崎・志穂です。
学園祭も2日目となり、結社企画の投票結果も続々集計されております。
結社企画の種目は全部で4つ。
中でもグルメストリートは、学園祭の食欲を担当する激戦区。屋台村や調理室近くの教室を中心に80店以上の模擬店が並んでいて、もうとてもとても大騒ぎです。
私も、皆さんの熱気に負けないように、頑張ってグルメストリートを巡ってグルメ探訪に行ってみたいと思います。
今日、探訪するのは、皆さんの投票で決定した上位の結社の企画です。
グルメストリートで最優秀に選ばれるということは、学園祭で最も美味しい料理を出したという事ですね。
今から、どんな料理が食べられるか、とてもとても楽しみです。
それでは、人気店の美味しいお料理やお菓子の紹介、そして、店員さんの素顔やお客様の生の声など、頑張ってリポートしていきますね。
グルメストリート探訪、レディGOです!
●第3位。ゴースト喫茶は、さながら真夏のハウィン
「えっと、すみません。このあたりにゴースト喫茶があるって聞いたのですけれど」
志穂は、グルメストリート第3位の人気店、ゴースト喫茶について、周囲の学生から情報収集を始める。
その姿は、それなりにグルメレポーターっぽい。
「あぁ、それならアッチだよ」
「そこの角を曲がった教室が2つ続いてる所だね」
「気分によって和風と洋風とが選べるのがいいよね」
「メニューも色々あったし、賑やかな感じで良かったわ」
さすが人気店らしく、道行く人の感触も上々のようである。
「これは、期待できそうですね。あっ、あそこでしょうか?」
志穂は、マイクを手にカメラ目線でそう言うと、時代劇に出てきそうな暖簾のある店に近づいていく。どうやらこちらは『和風』の入り口のようだ。
そして、
「あの、すみませーん」
志穂が、店の前でそう声をかけると……。
1人のマッチョが現れた。
「ぐわっはっはっはっはっはっ 千客万来商売繁盛!」
店から豪快に現れた高坂・弾正は、マイクをもったままの志穂を店内に担ぎ入れると、マッスルっぽいポーズを決めてくれた(彼のこのポーズを見られるのもゴースト喫茶だけらしい)。
でも、ゴーストコスプレはテツヲなので骨っぽかったのが少し残念だ。
「それでは早速ですが、この店の美味しい食べ物のレポートを……」
とりあえず、弾正公から視線を外しながらそう言う志穂に、つつつと雪女姿の月代・瑞樹が近づいて、メニュー表を渡してくれた。
「えと、ゆっくりしていってくださいね」
ペコリとお辞儀する雪女の瑞樹。
良く見ると、店内には九尾の狐や座敷童らがお茶やお菓子を運んでいる。
その姿は、少しだけユーモラスでそして可愛らしかった。
「このお店のお勧め料理をお願いします。あと、このお店のコンセプトを教えてくださいますか?」
雪女の瑞樹が注文を伝えに奥にひっこんだので、この志穂の質問には、座敷童の格好をした北坂・理都が答えてくれた。
「ここは、可愛いゴーストのコスプレ店員が接客する店なんだよ」
と。
ゴースト喫茶は和風と洋風にわかれており、店員もそれぞれ別々のコスプレをするそうだ。
「私は、洋風だとキャットガールで接待してます♪ 瑞樹は猫女なんですよ」
座敷童姿の理都は、楽しそうにそう説明してくれた。
ということで、志穂のゴースト喫茶レポート。
「ゴースト喫茶(和風)は、10種類のお茶と和菓子が楽しめる和風喫茶。
中でも、羊羹とみたらし団子は、とても美味しく、暖かいほうじ茶とも良くあって美味しかったですよ。
ゴースト喫茶(洋風)は、7種類の珈琲・紅茶とサンドイッチやケーキ、スコーンなどがいただけます。
和風、洋風ともメニューはオーソドックスで王道ですが、コスプレ店員さんの接客がしっかりしてて、楽しく過ごせる店だったのが高得点の理由だったのかなと思いますね。
あと、紹介できなかったですが、洋風の白い天使の子がとても可愛かったです♪」
●準優勝、じぇのさいどうぶつ喫茶は、危険な喫茶
第3位のゴースト喫茶から少し奥手にいった調理室に、その喫茶店はあった。
簡単だけど可愛らしく飾り付けた壁、そして、2つある扉には『じぇのさいどうぶつ喫茶』の文字が、一つは可愛らしく、そしてもう一つは怪しい字体で殴りがかれていた。
「グルメリポーターの志穂です。今日は、グルメストリート部門で堂々2位にランクインした、じぇのさいどうぶつ喫茶にきております」
誰にとも無く、マイクに向かってそう説明する志穂。
どうやら、どちらの扉をあけるべきか考えているらしい。
「ここは、やはり可愛らしい扉を……」
そう言うと志穂は、可愛らしい扉を開け……た瞬間。
「「「いらっしゃいませ〜」」」
パンダきぐるみの狭山・恭平、ゴキブリエプロンのセラフィナ・トウドウ、青いセキセイインコのポンチョを着た如月・菫らが、勢い良く出迎えてくれた。
どうやら、この店は、動物コスプレ喫茶らしい。
で、店員のゴキブリエプロンからメニューを渡された志穂は、とりあえず「炭酸飲料ジェノサイダーと、超頭脳パン」を頼んでみた。
頼んだ理由は、お勧めっぽい裏メニューだったかららしい。
「なんか、変な味ですね。あれっ? 中に何か……。あっいちごですね、ちょっとすっぱあまくて美味しいです」
はむはむはむと、超頭脳パンをほお張る志穂に、
「このパンには、サバと同じDHA、カルシウム、ビタミンB等がたっぷり含まれているのだ」
と説明してくれたのは、調理担当の五十鈴・トキだ。
裏方で仕事をしていたようだが、ネズミ尻尾2本が生えているのは、まぁルールだからだろう。
「へぇそうなんですか」
志穂は、それは頭が良くなりそうですねと言いながら、もう一つ手渡された飲み物を口に運び……。
「ぷはっっっ!」
と噴き出した。
かつてない超高濃度炭酸がお口の中をジェノサイド というキャッチフレーズは本当で、志穂はこの刺激に耐えられなかったらしい。
「藤崎、それを一気に飲むのは勇気が必要だぞ」
パンダ姿の恭平店長の冷静なツッコミに、志穂が「そういうのは先に言ってください」とか文句を言う。
その間に、こぼれたジェノサイダーは、犬耳尻尾の瑠璃鶲・かるらが片付けてくれた。
「ありがとうございます」
このとき、お礼を言う志穂に、かるらはちょっと照れてすぐに奥に引っ込んだようだ。
ということで、志穂のじぇのさいどうぶつ喫茶レポート。
「じぇのさいどうぶつ喫茶は、結社名のジェノサイダーと、動物喫茶をかけた名前ですね。
動物さんの店員さんの接客もきちんとしていますし、ちょっと危険な感じのコスプレ動物さんもいましたが、おおむね可愛かったと思います。
メニューの基本は、紅茶・コーヒー・ジュースにケーキ・アイスクリーム・パフェといった、喫茶店の王道です。
ただ、結社名でもある『ジェノサイダー』は、ようするに『凄いサイダー』という事なので、飲むときは気をつけてくださいね。
ちょっとビックリしますが、慣れると面白いかもしれません。
あとは、紹介できませんでしたが、1つだけ激辛入りのクッキーとジェノサイダーのセット(ロシアンセット)もお勧めだったらしいですよ。
勿論、私は頼みませんでしたけれど。
ということで、少し迷惑をかけてしまいましたが、とても楽しかったです」
●番外編の焼き鳥屋は隠れた名店です
レポーターマイクを持って、グルメストリートの人気店を案内していた志穂であったが、少しだけ物足りなさを感じていた。
そう、ここはグルメストリート。
なのに、3位のゴースト喫茶、準優勝のじぇのさいどうぶつ喫茶と喫茶店が続いているのだ。
「もっと、こう、お肉っぽいものが食べたいと思いませんか?」
意味も無くカメラ目線で志穂はそう言い切った。
「この取材の為に、朝ごはん抜いてきたんですから」
えへんと胸をはって威張る志穂。だが、そこは威張る所では無い。
と、その時、
「どうですか、お客さん。今なら焼きたてが食べられますよ」
と声を掛けてきたのは、なんと、焼き鳥屋の店主、青井・葵その人であった。
「勿論、いただきます!」
志穂は勿論即答すると、たったと店の中に入っていった。
店構えはこじんまりしていたが、店の中はなかなか繁盛しているようだ。
「つくねとやげんともも、ねぎま、全部塩で。あとしそささみも。飲み物は緑茶お願いします」
店に入った志穂が、ざっとメニューをみて頼んだメニューは、すぐに焼きたてで運ばれてきた。
「ほかほか、あつあつで味も満足だね」
志穂の隣にすわっていた雲居・春行もとても満足そうだが、志穂も負けずに満足していた。
やはり、焼き鳥は焼きたてが一番なのだ。
「次は、こころと砂ずりを食べるといいぜ!」
とは、やはり客できていた河上・聖の言葉である。
「こじんまりと開催しておりましたがそこそこお客さんが来てくれて満足です。お客さんと手伝ってくれた結社メンバーに感謝したいですね」
店主の葵がにこやかにそう言う。この店は、いわゆる隠れた名店なのだろう。
こうして寄り道の焼き鳥を堪能した志穂は、遂に、グルメストリートの最優秀結社企画への道を歩み始めたのだった。
400以上の結社企画の中で、ただ4つの結社にだけ許される最優秀の称号。
それは、学園祭に参加した全生徒の憧れであるに違いない。
そして、その栄えある最優秀グルメとは????
学園祭グルメの最高峰が、今、目の前に!!!
そう、その店は志穂の目の前にあったのだ。
●最優秀グルメストリートは、やっぱり蟹でした。
グルメストリートのほぼ中心。
お食事どころが集まっている、その廊下に、芳醇な香りが漂っていた。
食欲をそそる高級な香りは、志穂の脳裏に6月に行った修学旅行の夜を思い起こさせていた。
「こ、これこそは……キングオブグルメ、蟹さんの匂いに違いありません!」
ちょっと、わざとらしかったが、志穂のその言葉に偽りは無い。
何を隠そう、グルメストリートの最優秀に選ばれたのは、『早坂キャンパス高校2年蟹組・特設蟹鍋屋 』だったのだ。
「それでは、ドラムロールお願いします」
志穂は、ちょうどそのあたりを歩いていた生徒数人にドラムロールをお願いする。
「「「「ダララララララララ……ダララン!!」」」」
ノリの良い銀誓館の学生が声を合わせて、ドラムロールを合唱する中、志穂は、早坂キャンパス高校2年蟹組・特設蟹鍋屋の扉を大きく開け放つ。
「おめでとうございますっ! 早坂キャンパス高校2年蟹組・特設蟹鍋屋が、グルメストリートの最優秀に選ばれました!」
その瞬間、店の内外で、ひときわ大きな拍手が沸きあがったのだった。
「やっぱり私の好物、蟹を選んでよかったか! 最優秀なんて夢のようや!」
店員とお客と通りすがりの人々に祝福された店長の庭井・よさみは、蟹鍋の仕込みをしながら誇らしげにそう答えた。
学園祭の模擬店で『蟹鍋』をするという発想は、独創的であったが、何より、その鍋の美味しさとキップのよさが勝利の秘訣だったのかもしれない。
「予想外にお客様が来てくれているとは思っておりましたが……」
客席の巨大鍋のセッティングをしていた高天崎・若菜も、そう言うと、満足そうに微笑んだ。
最優秀という一言で、今日までの忙しさが報われた気がしてくる。
「志穂さんの席も用意しましたので、こちらにお座りください」
若菜が用意してくれた席は、最大直径2mもある鍋の前。
その横では、馬のマスクをした朱鷺野・稔(仮称:グランスティード少佐)が蟹を殻ごと食べている(ようにみえた)。
志穂もさっそく蟹鍋をつつきだし、数分後には、
「ほんとうに、もう、美味しいですよね。蟹!」
すっかりご満悦になっていた。
その志穂の食欲だけでは無いが、最大直径2mの大鍋の蟹は、車座に座ったお客によって次々と数を減らしていった。
そして心ゆくまで蟹を食べた後に、
「雑炊入れるぞ」
ロイト・グレイフィルが、蟹の旨みが染み出したスープに、雑炊用のご飯を豪快に投げ入れた。
それは、とてもとても食欲をそそる光景であった。
そして30分後。
「はぁ、おいしかった」
「ほんとに。蟹……美味しかったです」
志穂がお腹をさすりながら言うと、一緒のお鍋をつついていた須町・恵美も同意した。
彼女達は、まさに、蟹を堪能し尽くしたのだった。
「グルメストリートの現場レポート、グルメ探訪は以上で終了です。
実況は、この私、藤崎・志穂。協力は……、えっと、とにかく沢山の皆さんでした。
皆さん、本当にありがとうございました!
優勝は、早坂キャンパス高校2年蟹組・特設蟹鍋屋。
準優勝は、じぇのさいどうぶつ喫茶。
第3位が、ゴースト喫茶。
という結果になりましたが、それ以外にも隠れた名店や楽しいお店がたくさんあったと思います。
来年の学園祭も、今年以上に盛り上がるように、頑張りましょうね!
それでは、皆さん、ごきげんよーです!」
結社企画巡り 〜グルメストリート編 終了。
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