イルミット・ペルヴェール

<人工島の戦い 侵攻開始!>


 神戸市南の海上に位置する六甲アイランド。
 埋め立てによって作られたこの人工島と、本土との間を結ぶ六甲大橋に、銀誓館学園の能力者は集結していた。
 本来であれば往来があるはずのこの場所に、車の影は見当たらない。
 世界結界の力によって、誰もが六甲アイランドへの侵入を避けているのだ。

 能力者達の前に、朱塗りの重箱のようなものが運ばれて来る。
 メガリス『竜宮の玉手箱』。海底の竜宮城で手に入れたこのメガリスが、今回『生命賛歌』を発動するために使用されるのだ。
「みんな、準備はいいかしら?」
 イルミット・ペルヴェール(アイアンワークス・b10863)は周りの能力者達を見渡し、声を張り上げた。彼女の声に応じ、頷きと共に能力者達は玉手箱へと意識を集中させていった。
 竜宮の玉手箱を中心として、銀誓館学園の間に見えざる力が渦巻く。
 やがて渦を巻いた力が限界まで高まると同時、眩い閃光が六甲大橋の上に迸った。
 その眩さに能力者達が目を閉じた瞬間、体の内から、偉大なる生命の賛歌が湧き上がる。
 銀誓館学園のメガリス破壊効果、『生命賛歌』。
 その力は、今まさに顕れたのだ。

「進撃!」

 その一声と共に、能力者達は、一直線に六甲大橋を南へと進みはじめた。
 眼前、高架上にあるアイランド北口駅の周辺で、守りを固める人狼騎士とゴーストウルフの姿が目に飛び込んで来る。
 そして、そのさらに向こう……六甲アイランドの中央部では、巨大な青と赤の輝きを放つ何かが、その存在を雄弁していた。
 進みゆく能力者達にも、その存在が狼の形をしていることは、すぐに判じる。

「あれが、フェンリル……」
 圧倒的な巨大さに、能力者達の背筋を緊張が駆け抜ける。
 だが、あのフェンリルを止めなければ、この戦いは終わらない。
 フェンリルを放っておけば、影の城は破壊される。
 城中の吸血鬼は皆殺しにされ、そしてフェンリルの活動によって、世界結界も多大なダメージを受けるだろう。

 だが、能力者達の側にも援軍はある。北口駅の東に位置する運動公園を確保した吸血鬼達だ。
「日本の友よ! あなた達の助力に感謝致します!」
 ガンナイフやレイピアを手に吸血鬼達が次々に現れ、アイランド北口駅周辺に展開していく。
 銀誓館学園、人狼、吸血鬼。
 3勢力の入り乱れる戦いは、六甲アイランド北部を皮切りに、今まさに始まろうとしていた。