●最高のクリスマスプレゼント
「……小白?」
「もきゅ?」
麦チョコの袋を振って呼びかける千歳の声にモーラットピュアはワンテンポ遅れて主人の方へ振り返る。今日の小白はいつになく浮ついて様子がおかしい。目を見つめ、首をかしげてみるが小白は千歳の動作を真似るだけだった。
「もきゅ?」
時は進んでその日の夜、床についた主人が眠ったのを確認するように小白は何度も振り返る。
「もきゅ」
主人が眠ったことを確信したモーラットピュアは力強く頷くと行動を開始した。
まずは何処かから持ってきた大きな靴下を前足で抱え、何とかベッドの上まで引き上げる。
「……ん、小白」
「もきゅ」
ほっと一息つこうとしたところで千歳の口から自分の名が漏れ、弾かれたように振り向くがどうやら寝言だったらしい。嬉しそうに、だが主人を起こさないように小声でモーラットピュアは返事を返した。
「も……きゅ、きゅ」
ここから先も苦難の道だった。ベストポジションを確保していた先客のエリマキトカゲやウサギのぬいぐるみに場所を空けて貰い、持ってきた靴下へと身体を潜り込ませる小白。枕元、すぐ横に千歳の顔がある場所での作業は一歩間違えれば主人を起こしかねない。この難しい局面を乗り切れたのはモーラットピュアが主人を思う故か。
「もきゅ」
靴下に入り終えた小白は主人の並ぶように横になって、布団から出た千歳の指先にそっと触れてみる。触れたことで今すぐにでも起きて自分を見て貰いたいそんな欲求にでも耐えているのか。時折指や手に触れてはモーラットピュアは朝が来るまで主人の顔を眺めていた。
「……ん」
そして朝、目を開けたばかりでぼやけた千歳の視界に白くて丸いものが映る。
「もきゅ」
「小白?」
何であるかを認識するよりも早く、主人を起こさずに待っていたモーラットピュアの鳴き声が正体を告げた。はっきりしてくる視界の中央へ大きな靴下に入った小白の姿があることに気づくと、千歳は起きあけのぼうっとした顔を笑顔に変えて靴下ごとモーラットピュアを抱きしめる。
「ありがとう、小白」
「も、もきゅ」
若干苦しそうにしつつも、主人に負けないほど嬉しそうに小白は鳴いた。プレゼントを喜んで貰えたことが誇らしく、嬉しいと言うように。
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