●黒サンタはしっと団の刺客
「雪だ……」
「サンタさんからのクリスマスプレゼントかしら?」
「僕なら、雪よりキミをプレゼントに貰うんだけどね」
「本当? 身も心も、全部あなたのものよ♪」
甘い甘いカップルのやりとり。それを快く思わないものもいるわけで、そんな甘ったるい囁きを耳にしたならば、ドカンと派手な音を奏でてやる。
「発射……」
「イエッサー!」
セルヴィアの合図に合わせて空之介が派手にバズーカーを打ち鳴らす。
中から飛び出してくるのは大量のクラッカー。
恐怖におののくカップルの目の前に颯爽と現れるのは、黒サンタのセルヴィアと軍隊仕様トナカイな空之介。
大きなソリと共に現れた二人を呆然と見つめたままのカップル、先ほどまでの甘い甘い雰囲気はそこにはなかった。
「やっちまいなっ!」
セルヴィアの突然の指示。隙だらけのカップルは空之介の手によって、ソリにつんだ真っ白のな袋の中に詰め込まれていく。
カップルを見つければ、また同じようにクラッカーバズーカーを打ち鳴らし、カップルの隙を見つけては袋詰め。
それは黒サンタからのプレゼント。
しかし誰へ?
「で、このプレゼントは誰に?」
「もちろん総統(しっとマスク)復活の生贄」
空之介の素朴な疑問に、さらりと格好良く答えるセルヴィア。まるで悪の秘密結社の女幹部のような雰囲気さえ醸し出している。
「ところでコレ……襲えば襲うほどソリが重くなって辛いんすけど」
「文句を言うな」
何組かのカップルを袋詰めにしたところ、次第に重くなってくるソリに耐えきれずの空之介の弱音は、あっさりばっさり、切り落とされてしまう。
ここまでくれば仕方ない、総統復活のためだと己に言い聞かせてずるずるとソリを引っ張っていく空之介。
そうしてまたどこかで鈴の音色の変わりに、大きなクラッカーの音が鳴り響く。
しっとの心は父心、押せば涙の泉湧く!
見よ! しっと魂は! 暑苦しいまでに燃えている!
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