アウレリア・ディンブラ & 桜井・優希

●Happy X,mas!

 今日はクリスマスイヴ。
 クリスマスイヴといえばサンタクロース。
 そして、サンタクロースのお仕事といえば……。

「さあ、がんばりますの!」
 サンタのコスチュームに着替えて、アウレリアは拳を握った。
 足元には大きな大きな袋が1つ。中にプレゼントが沢山詰まった、サンタさんの白い袋だ。みんなにプレゼントを配ることが、今日のアウレリアたちのお仕事なのである。
「桜井様もファイトですの」
「うん、頑張ろうね!」
 隣に立つのは、同じようにサンタのコスチュームに身を包んだ優希だ。
 2人は頷き合うと、一緒に「うんしょ」と声を掛け合いながら、サンタの袋を担ぎ上げた。
 ずっしりとした重みに負けそうになるけど、でも挫けない。
 2人のサンタクロースは、えっちらおっちら、プレゼントを待つ子供達の元へ……。

「きゃあ!?」
「わわわっ!」
 ……ちょっとだけ雪が降ったから、足元が滑って危ないけど、よーく気をつけて踏ん張って。
 危なかった、と2人でホッと安堵しながら慎重に歩く。
 だってだって、今日の2人はサンタクロース。みんなの大切なプレゼントを、たっくさん抱えているんだから。
「えーっと、次のおうちは……」
 地図を片手に歩き出した優希の姿に、そっとアウレリアは思う。
 彼は、まだまだ気が弱いところがあるけれど、でも……。
(「こうして、色々と経験を積んで、立派な男の子へになってくれるといいですわね」)
 その日がちょっぴり楽しみだと、アウレリアはくすっと笑って。でも、その事は優希に気付かれないようにしながら、彼の後ろを歩いていく。

 無事に最後のプレゼントを配り終えた2人は、イルミネーションが輝き始めた街を歩いていた。
 そんな中、ふとアウレリアは立ち止まって。
「? どうしたの?」
「ハッピーメリークリスマス、桜井様」
 つられるように止まり、首をかしげる優希に、アウレリアは1つの包みを差し出した。今日はクリスマスだからと、予め用意しておいたプレゼントだ。
 突然の贈り物に目を丸くしながら、優希が包みを開ければ、その中身は真紅の蝶ネクタイ。
 ありがとう、と笑う優希にアウレリアも笑い返して。二人はクリスマスの夜の街を再び歩き始めた。




イラストレーター名:時々ちどり