ツカサ・カミナギ & 四旋院・黒蘭

●クリスマスを和風に彩って

 四人の恋人を持つツカサ。
 今はその一人である黒蘭と二人っきりでデートをしていた。
 どこぞのしっと団が聞いたら、きっと襲ってくることだろう。……ここにはいないが。

 黒蘭とのデートでは、お座敷で和風なクリスマスであった。
 しかも二人ともきちんと着物を着ている。
 一足先に楽しむお正月のようである。

「この国では、クリスマスも一種の行事なのだな」
 穏やかな空気の中、ツカサはそう口を開いた。
「ふふ……親しい人と共に過ごすという点では同じですよ」
 和服でクリスマスというのは、日本でも珍しいだろう。
 けれど、この静かで穏やかな空気が、二人にとって心地よかった。

「せっかくだから、耳掃除でもしましょうか?」
 思いついたように黒蘭が提案すると。
「ふむ……」
 ツカサは考えるような素振りをするものの。
「では頼む」
「はい」
 その提案を素直に受けることにしたようだ。嬉しそうに黒蘭は返事をして、耳掃除を開始した。

 耳かきの気持ちよさと穏やかな雰囲気、それと黒蘭の柔らかな太ももの感触。
 いつしかツカサは眠りに落ちていた。
 一方、黒蘭はそれに気づいていなかった。
 いや、気づく間もなかったというべきだろうか。
 なぜなら、耳を傷つけないよう細心の注意を払いつつ、丁寧に作業を進めていたのだから。
 やっと耳掃除を終えた黒蘭が寝ているツカサに気づいた。
「あらあら……」
 微笑みながら、その寝顔を眺めている。
 あまり起こさないようにしていたのだが、どうやら、ツカサが起きたらしい。
「ん……好きだぞ、黒蘭」
 寝ぼけているのか、まだ眠いのか細い目をしながら、ツカサは黒蘭にそう告げた。
「……はい、私もですよ」
 幸せそうに微笑みながら、黒蘭もそう答える。
 二人きりの静かな時間。彼らの穏やかな時間はまだ、始まったばかり……。




イラストレーター名:藤田ハルイ