●輝きの庭園
空には綺麗な月が浮かんでいた。
幻想的な光が照らす庭園には、今、ツカサと里緒奈の姿だけしかない。
「……素敵です」
ツカサと腕を組んで歩きながら、その光景に里緒奈は溜息をこぼす。アーチを潜り抜ければ、一瞬だけ闇が頭上から覆いかぶさる。それを通り抜けた後、また空に浮かぶ月からの光を受けながら歩けば、静かにそっと咲く花を見つけ、また目を細める。
こんな素敵な場所で、彼の温もりを感じながら一緒にいられること。
それはとても嬉しいことで、より一層、この幻想的な雰囲気を楽しませてくれるような気がした。
「なんだか、うちの庭を思い出すな」
そんな里緒奈の様子に微笑を浮かべつつ、ツカサはそう呟いた。小首を傾げる里緒奈に、ツカサは前に見てるだろ? と苦笑する。
「覚えて無いなら、また一緒に見に行くか?」
「えぇっ。ま、また先輩のご実家に!?」
そのツカサの言葉に、里緒奈は一気にあたふた大慌て。真っ赤になって頬に手を当てつつ「お、お願いします」とツカサを見上げる。
「ああ、勿論いいとも」
その様子がとても可愛らしくて……愛しくて。ツカサは笑いながら頷くと、ふと、里緒奈の方へ手を伸ばす。
そっと、指先で頬に触れて。手のひらで包み込んで……そのまま、唇に近付く。
「あ……」
ハッと小さく息を呑む里緒奈だったが、すぐに、そっと瞳を閉じて。
2人はキスを交わす。
「……里緒奈」
そっと離れてツカサは彼女の名を呼びながら、ポケットの中に手を入れた。
指先が触れるのは小さな箱。
取り出して、開いた中に輝くのは小さなリング。
「それは……」
驚く里緒奈の左手を取って、司はそっと、その薬指にリングをはめた。
それは、里緒奈以外の誰にも似合わないほどにピッタリのサイズで。
「ん、まあ、とりあえず予約の証だが……受け取ってもらえるか?」
「ぁ……はい! もちろんです!」
彼の言葉に、こくこくと里緒奈は頷き返す。じんわりと広がる喜びに、不意に涙がこぼれそうなくらい、胸がとても熱い。
そんな、嬉しそうな彼女の様子に、ツカサもまた嬉しそうに笑むと、愛しそうに彼女を見つめ……。
そっと、抱き寄せて。
潤む瞳を覗き込んで。
そのまま……。
2人の影はもう1度、何かを誓うかのように重なり合う。
辺りは静かで、空からは月の光が降り注いでいて……里緒奈の薬指の指輪を、そっと輝かせた。
| |