龍宮寺・命 & 小此木・エドワード

●金色の雪と桃色のクリスマス

 てくてくと、二人は一緒に歩いていく。
 目指すはクリスマスツリー。
 そう、今日はクリスマスなのだから。

「命、そんなとこ歩いてると、危ないぞ」
「へーきなのじゃ。わらわが大丈夫というのじゃから、大丈夫なのじゃ」
 命は20センチほど高い花壇の縁を歩いていた。その隣に歩道を歩くエドワードがいる。
「……しょうがないな」
 そう呟き、エドワードはそっと命に手を差し伸べた。
「ん?」
 首を傾げる命にほらっとエドワードが言う。
「俺が言っても聞かないだろ? 手、掴んでおいてやるよ」
 どうしてかなんて、言わない。
 でも、言わなくてもわかるから。
 少し恥ずかしそうに命はその手に自分の手を重ねた。

「あ、ツリーじゃっ!」
 弾かれるように命が声を上げる。
 キラキラと瞬くクリスマスツリー。
 大きく綺麗に着飾ったモミの木を見上げながら、思わず感嘆の声が漏れる。
「エド! すっごくきれ……」
 命の声が途切れた。
 そう、見とれてうっかり、自分が危ない場所にいることを忘れていたのだ。
 バランスを崩し落ちそうになるのを。
「だ、大丈夫かっ!!」
 ばふっと、エドワードの胸の中に飛び込むように受け止められた。
 反動で少し後ろに下がったりしていたが、エドワードも命も怪我は無い。
「怪我、してねーな?」
「し、してないのじゃ……」
 思わぬアクシデント。けれど、命にとっては、嬉しいイベントの一つ……かもしれない。
 ぽっと頬を火照らせ、命はエドワードの顔が見れない。
「け、怪我無くてよかった。その……気をつけろよ」
 俯く命に見えなかったもの。それはエドワードも頬を火照らせていたこと。

 間近に見るツリーは、本当に綺麗だった。
 そして、瞳を輝かせながらツリーを見るエドワードの姿も。
「すっげー! 金色のツリーだぜっ! おい、命、見てみろよ」
 と、命と目が合った。
 視線を離そうにも離せない。
「な、何でこっち見てるんだ?」
 俺の顔に何かついているのか……と言いよどんだエドワードに。
「な、なんでもないのじゃ!」
 命はそういって、やっと視線を外したのであった。

 幼き二人の心がほんのり温かく感じる。
 ふわふわと降る雪が一層、ツリーを輝かせていた。
 きっと忘れないだろう。
 今日の素敵なツリーも思い出と一緒に。




イラストレーター名:たぢまよしかづ