●サンタは舞い降りる
「サンタさんはまだかのぅ?」
どきどき、わくわく。
命は屋根の上でサンタさんが来るのを待っていた。
お供に、お気に入りのマグカップと、暖かいホットミルクを入れた水筒を携えて。
トナカイのソリに乗ったサンタさんがやって来るのを見逃さないように、じーっと空を見上げる。
夜が更けていくうちに、はらはらと白い粉雪が降ってくる。
「……遅いのぅ」
サンタさんは、まだだろうか?
沢山の子供の家を回っているから、遅くなっているのだろうか?
時間が経つうちに、体は徐々に冷たくなってきて……命は、手に暖かい息を吹きかける。
体を暖めようと、最後のホットミルクをマグカップに入れて、こくこくと飲めば、今度は少しずつ睡魔が忍び寄る。
時計は無いけれど、もうきっと、かなり遅い時間なのだろう。
ひょっとしたら、夜よりも朝に近い時間なのかもしれない……。
そんな事を、ぼんやり考えていたら、瞼がちょっとずつ落ちてきて。
うつらうつら、こくんこくん。
頭が揺り動いて……。
――とんっ。
誰かの靴音が聞こえた気がして、命は慌てて頭を上げた。
「あ……」
人影に気付いて、目をこする。
夜も更け、暗闇に覆われた中だけれど、でも分かる。
そこには確かに、大きな白い袋を背負ったサンタクロースさんがいた!
「良い子の命さまにプレゼントをお届けに参りましたわー♪」
表情は見えないけれど、でもきっと、にっこりと笑っているのだろう。
その声は、明るくて優しくて暖かい。
ごそごそと物音をさせながら、サンタさんは近付いてくると、命の目の前にプレゼントを差し出した。
「メリークリスマス、命さま♪ ですのー」
指先を伸ばした命の両手が、ラッピングされた箱に触れる。
中身は、一体何だろう?
わくわくしながら箱を見つめる命。
ああ、でも、その前に。
「ありがとうなのじゃー!」
とびきりの笑顔で、心から嬉しそうにお礼を言うと、命は仕事を終えたサンタさんを見送る。
貰ったプレゼントを、大切そうに抱きしめながら。
「ふふ……良かったですわー♪」
屋根から下りた壱無は、嬉しそうに笑みを浮かべながら、そっと命に気付かれないよう様子を伺う。
そして、命がちゃんと部屋の中に戻るのを確認すると、壱無もまた、その場所を立ち去るのだった。
今日は、クリスマスイヴ。
一年に一度、素敵なプレゼントが貰える日。
だから、あなたにも、今宵は素敵なプレゼントがありますように……。
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