●クリスマスツリーの下で
待ち合わせはイルミネーションが綺麗な、クリスマスツリーの下。
遅れてしまったかもしれないと走っていく。菊理はその足取りが軽いのが自分でもよく分っていた。家族ともあまり祝ったことがないのに、今日は特別な彼と一緒にお祝いができるそれだけで、とても嬉しくなる。
「お待たせしましたの」
クリスマスツリーの下、既に待っていた冬弥に声を掛ける。
自分に笑顔を向ける冬弥を見て思う。父の言葉は間違っていなかった。
恋人などできるとは思っても居なかった。だが今こちらに笑顔で駆け寄ってくる菊理は愛しくて守るべき人。
『ずっと側にいて欲しい人がいると人は強くなれる』その父の言葉を思い出しながら、菊理へと手をさしのべる。
「あ、あのプレゼントですの」
冬弥の手を取り頬を赤く染めた菊理が、綺麗にラッピングした包みを彼へと差し出す。
ありがとうと。穏やかな笑みを浮かべてプレゼントを受け取る冬弥。中身は武運長久の祈願をしたお守り。
あまりクリスマスプレゼントらしくないけどと、照れたような笑みを浮かべる菊理に冬弥は「ありがとう」と言葉を返す。
ゴーストや来訪者との戦いには危険がつきまとう、常に無事に帰ってこれるようにと彼女の想いが詰まっている。
クリスマスイルミネーションが綺麗な街を一緒に歩いていく。
他愛もない会話から感じる幸せをかみしめて。
隣で笑う菊理がとても可愛らしい、そんな彼女が寒くはないだろうかと冬弥が自分がしているマフラーを外すと彼女の首にそっと巻く。
会話が途切れて、しばらく黙ったまま一緒に静かな街を歩いていく。
冬弥が立ち止まった。どうしたのだろうと、菊理も立ち止まり彼の方を見上げた。
「改まってになるけど、菊理のことが好きだよ。先の話になるけど、もしよければ一緒にならないか」
「は、はい。わたくしで宜しければ。いつまでも一緒に……」
自分の気持ちをはっきりと言葉にする冬弥が、自分を見上げている菊理の身体を優しく抱きしめる。菊理も抱きしめられながら、嬉しい言葉に頷き彼の身体を抱きしめ返す。
そうしてそのまま、そっと菊理の顔に自分の顔を近づけていく冬弥。
菊理は頬を赤くして、きゅっと瞳を閉じた。
ゆっくりと二つの影が溶け合った。
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白山・菊理 
