柴沼・朔 & 宮野・紫苑

●クリスマスの夜に…

 
「やっぱ、綺麗なもんだな」
 訪れた公園は光に溢れていた。秋に葉を落とし、寂しい姿を晒していた木々もこの季節は電飾の蔦を纏い、実のや花の様に枝にぶら下がる電球は色とりどりの光を放つ。点きっぱなしの電球が比較的多いが、中には点滅する物や色を変える物もあって、「イルミネーションの綺麗な公園がある」と言う知り合いの情報が事実だと朔の目に飛び込んでくる光景が教えてくれた。
「うん、本当に綺麗」
 横を歩く紫苑も嬉しそうに頷いて、二人は幻想的な風景の中を並びながら歩く。紫苑の機嫌が良いのは今が予想外の産物である為か。
「……でも、こういう場所選ぶのって朔ちゃんのガラじゃない気もするね」
 くすくすと笑いながらくるりと周囲を見回せば、木々だけでなく普段はエメラルドグリーン一色の無粋なフェンスさえ電飾と飾りが半オブジェ状の絵画に変えてしまう。
「お、ちょっとそこのベンチで待ってな」
「え? ……うん」
 フェンスの端にあるものを見つけて朔がかけた声に、紫苑は二度瞬きをした後、頷いて言われたベンチへと向かった。
「何だったのかな?」
「ほい。お待たせ。……熱いからヤケドすんじゃねぇぞ?」
 ベンチに座って首をかしげていた紫苑の目の前に気がつけば朔が立っていて。差し出されたのは自販機から出したてのココア。
「ありがとう。んもう、分かってるよぅ」
 受け取ったココアはとても暖かかった。礼を言っったものの、流石に後半はちょっと心外で紫苑はちょっぴり口を尖らせる。表情は言外に「……そんなに、私ドジじゃないよ?」と言っていて。
「あ! そうそう、プレゼント」
「プレゼント? 俺に?」
 そんな表情が突然崩れたのは何の前触れもなく、手を打った紫苑が差し出すプレゼントに朔は思わず聞き返す。
「うん、今日のこの時間の思い出に……ね?」
「……サンキュ。大事にる。んじゃ、俺も紫苑に……」
 照れて頬を染めながら、朔もプレゼントを取り出して……。

「また来年も一緒に楽しく過ごせたらいいね」
「……そうだな。来年もよろしくな」
 朔は返事を返しながらニッと笑う。ベンチに座ったまま、二人はお互いに開いてから貰ったプレゼントを抱えてイルミネーションの光を眺める。缶から立ち上る湯気がゆらゆらと揺れていた。




イラストレーター名:緑川 葉