●Merry Xmas〜ありえない程穏やかな午後〜
昼下がりの喫茶店Cafe『lune brumeuse』
ギャルソン姿の流維が店の片隅に葉巻を咥えた鷺のぬいぐるみを置く。首から「さぎぃ」と書かれた名札が掛けられている。ぬいぐるみを置き終わったら、今度はケーキの準備にとりかかる。
しばらくすると流刃が店にやってきた。
「あはははははははっ!! 似合う似合うっ!」
店にやってきた流刃のフードに耳と髭が付いている黒猫ポンチョの姿を見て、大笑いで迎え入れる流維。
葉巻を咥えた鷺のぬいぐるみは流刃から流維へのクリスマスプレゼント。
可愛い猫耳と立派な髭がついている黒猫ポンチョは流維から流刃へのクリスマスプレゼント。
「お前に言われても嬉しくねー。どーせならこー……綺麗なおねーさんとかがいいよ」
まだ笑っている流維の様子に流刃がむっとした様な口調で言うけれども、それが照れ隠しなのは頬が少し赤い事ですぐにばれてしまうかもしれない。
「……なるほど…ケーキはいらないのねー」
「すいませんごめんなさい」
「宜しい」
流刃の減らず口に流維はぴたりと笑うのをやめて、準備していたケーキを片付ける準備をしようとすると、そればかりはご勘弁をと、流刃が平謝りする。すると一言、なんだか上から目線で答える流維。
テーブルには銀のプレートに乗ったブッシュドノエルがあった。
ブッシュドノエルの上には沢山の砂糖菓子でできた黒猫が乗っている。
デコレーションもかわいらしく、食べてしまうのが惜しいようなケーキでも流刃はお構いなしに、フォーク片手になんのためらいもなしに、ざっくりとフォークをケーキに刺す。
流刃がおいしそうに食べてくれて、プレゼントした黒猫ポンチョを着てくれていることでとても満足そうに、休むことなくケーキを食べてくれる流刃を見つめる流維。
持ってきた紅茶を黒猫が描かれたマグカップに注ぐ。
ゆっくりと時間は流れていく。
みるみるケーキはなくなっていくけれども、それが嬉しいと思う。
こんなにも穏やかな昼下がりを過ごすのは、珍しいかもしれない。けれども今日ぐらいはのんびりと、ケーキと紅茶を楽しむのも悪くないかもしれない。
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