癸・麻璃流 & 聖鳳院・喪作

●愛深きゆえに…

 誰もが浮き足立つ、クリスマスイブ。
 聖なる夜……なのだが。

 どうやら、彼……喪作はちょっぴり邪な心を抱いている様子。
 喪作の目の前に通るのは、可愛らしいミニスカートのサンタ服を着ているお姉さん。
 愛らしい瞳。
 はちきれんばかりの胸と太もも。
 そして、ちょこんと乗った赤い帽子。
 きゅぴーん。
 もう、喪作の目は、そのお姉さんに釘付け。
「ふぉーっ♪ ミニスカサンタのおねーさーん♪」
 可愛らしいお姉さんを追いかける喪作の前に、一人の少女が立ちはだかった。

 時間を少し撒き戻そう。
 喪作が素敵なお姉さんを発見したとき、そんな喪作を見ていた一人の少女がいたのだ。
「あ、だんちょーさんなのです♪」
 少女……いや、麻璃流は大好きな彼を見つけて、声をかけようとしていたのだ。
「ん?」
 しかし、その彼は、別のものに目が奪われている。
 そう、麻璃流と同じミニスカートのサンタ服を着ていた、可愛いお姉さんに。
 麻璃流の怒りが頂点に達し、そして……。
「むぅぅ、だんちょーさんの……ばかぁぁっ!」
 麻璃流の放った強烈な一撃が、喪作のわき腹に突き刺さった。
 宙に舞う喪作は、ぺちっと言わんばかりに地面に落ちてきたのであった。

 何が起きたのかわからない。
 いや、素敵なパンチがわき腹をえぐったときに、ぴんと来た。
 これは、愛しい人からの素晴らしきパンチ。
 地面にたどり着いたときにはもう、ぐったりとしていた。
 きっと、恐らく……まだ攻撃が来ると覚悟しながら。

「全く……しょうがない人ですぅ。今日は特別な日なので許すですぅ」
 ぷんと怒りながらも、麻璃流はそう告げた。
 そう、今日はクリスマス。だから、今回のお仕置きはこれくらいで。

 顔を上げた喪作の目に映ったのは。
 可愛いらしい麻璃流のサンタ服。しかもミニスカート。
 それにちょっぴり癒されたのか声が出た。
「まりるもミニスカサンタですね……可愛いですよ……」
 ダメージが残っていたせいか、喪作の意識は遠くなる一方。
 その喪作の言葉にほわっと顔を赤くさせる麻璃流。
「はわーっ! 嬉しいですぅー♪」

 喪作は消え行く意識の中で、頬にくすぐるかのような、柔らかい何かを感じた……。




イラストレーター名:あにゅ