相澤・頼人 & 瀬之咲・來夢

●宿り木の下で 〜聖夜の誓い〜

 宿り木の下で告白を交わし、キスをした2人は、永遠の愛を得る事が出来る。

 そんな1つの言い伝えを信じて、頼人と來夢は宿り木の下へ駆け込んだ。
 恋人達の成就を許してたまるか! とばかりに繰り広げられる妨害、妨害、妨害。
 協力者達の援助を受けながら、それらをかいくぐって、2人はようやくここまで来る事ができた。
「……せんぱい」
 來夢は、そっと頼人を見上げた。
 何も知らない彼を誘って、ここまで来てしまった。
 心臓が、ばくばく鳴って止まらない。
 でも、勇気を出して。
 ここまで来たのだから……伝えよう。

「……せんぱい、好き……。私の気持ち、受け入れてくれますか?」
「え……」
 その告白に、頼人の目が見開かれた。
 自分に懐いている後輩。そう思っていた來夢からの突然の告白に、頭が真っ白になってしまう。
 ……そう、告白されたのだ。
 彼女の言葉が持つ意味を、ちゃんと理解するまで時間は掛かったけれど、でも。
 ようやく分かった頼人は呆然としながらも問い返す。
 俺なんかでいいのか? と。
「そんな……せんぱい、だから……」
 俺なんか、なんて事は無い。來夢は彼だから、いいのだ。
 こくんと頷き返した來夢の気持ちを受け止めて、頼人もまた頷き返す。

「あ、あの、それで……その……」
 頼人と見つめ合うのが少し恥ずかしくて、赤くなりながら、來夢は宿り木に秘められたジンクスについて話す。
 どんどん顔が赤くなっていくのが、わかる。
 だけど。
「だ、だから……せんぱい、キス、して……ください」
 消え入るように、でも相手にしっかりと届く声で、來夢はそう求める。
 彼女の話を聞くうちに赤くなっていた頼人も、その言葉で一気に真っ赤になる。
 でも……。
「……うん」
 一呼吸置いてから、そっと、來夢を抱きしめて。
 真っ赤になりながら瞳を閉じた彼女に、頼人はそっと唇を重ねた。

「あ……」
 二人の影が宿り木の下で離れていく。
 でも、來夢はそっと、頼人へ一歩踏み出して。そのまま、彼の胸に顔をうずめる。恥ずかしさと嬉しさと安堵と……いろいろな物でいっぱいになって、身体に力が入らない。
 そんな彼女を頼人は抱きしめると、その気持ちが落ち着くまで、ずっと優しく頭を撫でてあげる。
 宿り木の下、幸せな気持ちに満たされながら……。




イラストレーター名:TOMOMING