●大切な人の隣で
「メリークリスマス!」
2人は一斉に言いながら、クラッカーを鳴らした。
脇には飾り付けられたクリスマスツリーと、殺風景な部屋のインテリアにと春歌がプレゼントしたレトロなミニカー。
じゃあ早速、と鍋の蓋をあける春歌の指には、龍之介からプレゼントされたリングがある。
今宵は、クリスマス。
学園でのパーティを楽しんだ後は、2人で一緒に楽しいひととき。
ぐつぐつ煮込んだ鍋を2人で突付き、デザートにケーキを切り分けて。
その全てが2人の胃袋に消え去るまで、そう長い時間は掛からなかった。
「ふあ〜……」
今日一日めいっぱい楽しんで、こたつで温まりながらお腹一杯ごはんを食べれば、今度は睡魔がやってくるのは、ある意味人間として自然なことなのかもしれない。
龍之介は、大きな欠伸を何度も繰り返す。
「へへー。プレゼントありがとう先輩。マジ大事にするー」
その隣で、春歌は嬉しそうに手のひらを広げてリングを眺めている。天井の蛍光灯を反射するのを見ているだけで、どんどん嬉しさがこみ上げて、顔がにやけてしまう。
「――春歌もありがとな。つーかそのリング気に入って即買いしちまったよ――」
「これ……デザインがアレっぽいっていうか……えへへ」
小さく返る彼の言葉に、やっぱり嬉しそうに笑い続ける春歌。
「――ん? アレって? 何っぽいんだ――?」
「わ、わかってて聞いてない? その……けっこんゆ……って寝てるっ!?」
てれてれ赤くなりながら振り返れば、目を閉じてむにゃむにゃ呟く龍之介の姿。そういえば、なんかちょっと話し方がいつもと違った、ような気がする。
そうか、寝てたのか……。
(「この指輪買うためにがんばってくれたのかなぁ……」)
ちょっと寂しいけど、でも、そう思ったら彼を責める気にはなれなくて。ぼんやりと、彼の顔を見つめているうちに、ふと春歌にも睡魔が近付いてくる。
「あふ……」
欠伸をひとつして、龍之介にこたつ布団を掛け直してあげる春歌。
そのまま、そっと彼に……キスをして。
「……大好きだよ。来年もその先も、ずっと一緒にいようね」
そのまま、自分もこたつ布団に潜り込んで、春歌は瞼を閉じる。
龍之介から、さっきのように何か、言葉は零れたのだろうか?
でも、それを確かめる間もなく、春歌はあっという間に眠りに落ちていった。
こんなに近くにいると、ドキドキが止まらないくらい大好きで……でも、何よりも、それ以上にとても安心できる、あなたのすぐ隣で。
……おやすみなさい。
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