勅使河原・氷魚 & 海音・蓮見

●クリスマスパーティ会場にて

 クリスマスイヴの日は、銀誓館学園でも様々なパーティが催される。
 その会場の1つを訪れた氷魚は、蓮見と一緒にチョコレートファウンテンの前にいた。
「苺、美味しいですね」
「マシュマロも合いますよ」
 台からとろとろと噴水のように溢れるチョコレートに、串刺しにしたフルーツやラスク、マシュマロをつけて口に運ぶ。一口ずつ、ちょっとずつ違う物にチョコレートをつけて味わうのが、面白くて、とても楽しくて、そして美味しい。
 感想を言い合いながらお互いのオススメを食べれば、また笑みがこぼれていく。

 蓮見と一緒にチョコレートフォンデュを楽しむうちに、氷魚は緊張が和らいでいくのを感じた。
 こんな風にドレスアップしてパーティに参加するなんて、初めての事だったから、さっきまでは、自分でもぎこちなさを感じていたくらいだったけれど……でも、今はもう、すっかり落ち着いた気がする。
 チョコレートフォンデュを味わいながらの雑談に、そんな話をしてみれば、でもとっても似合っていると蓮見は微笑む。
「折角ドレスアップしたんですし、この後は夜のデートに出かけてみては?」
「え、で、でも……」
 彼女の言葉に氷魚は大慌て。相手はこういったイベントにあまり興味が無い人だし、それに、そんなこと、なんだか恥ずかしいし……そう赤くなって苦笑している氷魚に、そんなこと無いと思いますよと蓮見は首を振る。
「積極的になれない所も含めて、お相手は好きだと思っていて下さる方のようですから、大丈夫だと思いますけれど……装いを変えて楽しませて差し上げるだけでも、違うと思います。紳士な方なら、褒めて下さるはずです」
「そ、そうでしょうか……?」
 不安そうな氷魚の背中を、そう一押しする蓮見。彼女の言葉に、氷魚もじゃあ……と頷き返す。
「……そうですね、考えてみます。でも……流石に、この格好のままは無理です」
 自分の体を見下ろして、そう赤くなる氷魚。この格好は、その。ちょっとセクシーすぎるというか何というか……。
 だとしたら、どんな格好にしようか。蓮見のようなドレスも素敵だけれど、でも……。
 まだ、行くとハッキリ決めた訳ではないのだけれど、でもそんな事を、ぼんやりと考えながら。
「ありがとうございます、蓮見先輩」
 そう感謝を口にして、また氷魚は蓮見と一緒にチョコレートフォンデュを楽しむのだった。




イラストレーター名:柴崎晴