●【プリクラ戦争】脱☆幼なじみはまだ遠い
賑やかだったクリスマスパーティー会場を後にしてやってきたのは、更に賑やかなゲームセンター。
識羽にぞっこんなのり子には野望があった。
このクリスマスを機に、幼なじみアンド片思い15年の関係から一歩踏み出したい!
そして、できるのなら折角のクリスマス。何か思い出を残したい……。
だから、のり子は識羽をプリクラに誘った。
「きゃー。何すんのーっ!?」
プリクラ機が並ぶ方向から、のり子の大きな声が聞こえてくる。
まぁ、プリクラぐらいなら妥協できる。幼なじみだしいいだろうと、渋々了解した識羽だったが、ここは譲れない。
落書きは譲れないっ!!
「ちょーっと待てリコ! 何だそのラブラブ15周年とか! 嘘書くな嘘!」
「嘘やないもん! あっ! あっ! あー! あーー! 消しおった! ひどい! しきちゃんの鬼!」
落書きに時間制限がなかったのが、良かったのか悪かったのか、のり子からペンを奪い取る識羽。「冗談じゃねー」と、呟いたり、ぶつぶつと文句を続けたりしながら斜線を引いたり、訂正をいれたり。
もちろん、のり子もそれをよろしく思わないから、更にその上をいく落書きを書き加える。
「うっ……うっ……こないに好きやのに、何で通じへんの………?」
今回の恋愛戦争も空振りに終わりそうな予感に、のり子が泣き出す。もちろん嘘泣きだが。
嘘泣きをして、目元を腕でぬぐうのり子が、思わずぽつりと漏らした。
その言葉に一瞬、落書きを訂正していた識羽の手の動きが止まる。
「……リコ、押してもだめなら引いてみろって言葉、知ってるか?」
少しだけ考えて、識羽なりに言葉を選んでみた。のり子の言葉に、そんな深い意味もないだろうと、なぜか自分に言い聞かせる識羽。
なんだかんだ言い合いながらも楽しいクリスマス。
周りからは仲の良いカップルと思われた二人かもしれないが、ちゃんとカップルとして迎えられるクリスマスはくるのかどうか。
それは、きっとサンタクロースにも分からない。
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