●Dance with Youにて〜『な、何するんですー!?』〜
久しぶりに愉烏が友梨をダンスに誘った。
緩く流れるワルツの音色に乗る二人。
愉烏と踊るとやっぱり一番踊りやすくて、楽しいと思う友梨。愉烏の方もこれまでに色んな女性と踊ってきたが、やはり友梨と踊ると楽だと思う。彼女とだったら、幾らでも踊っていられる様な感じがする。
一曲終われば、記念撮影をしようという事になった。
なんとなくいやな予感がする友梨。
スタッフにカメラを渡し構えた瞬間にその出来事は起こった。
友梨が髪の毛を整え、ポーズを取ろうとしたときだった。軽く愉烏が彼女の肩を叩いた。
何かあるのだろうかと、無謀に振り返った友梨の顎を愉烏の指先が捉えた。
友梨が何事だと思う間もなく、愉烏の銀で視界は遮られていた。
そうしてそのまま友梨の唇に、愉烏が口づけを落とした。
スタッフはもちろんだが、当人の友梨の驚きが一番大きかった。
口づけされたまま、凍り付く友梨。そんな彼女の事は良く分かっている愉烏は、彼女の動きが止まっている間、彼女をしっかりと味わうのを忘れるはずがなかった。
「な、何するんですー!?」
慌てふためいた友梨の声が響いた。それに愉烏は涼しい顔をして一言さらりと言ってのける。
「いや、慌てる顔も可愛いですね」
その一言で、更に友梨の顔が赤く染まる。
彼のことは嫌いじゃない、むしろ好きだし尊敬もしている。けれども普段淡泊なくせに、突然人前で恥ずかしいことを言ったり、キスをしたりするのは勘弁して欲しい……。と、言おうとしたが、慌てすぎて口がぱくぱくと動くだけ。
そう……しかも唇に。
そう思うと、思わず自分の唇に指先を当ててみる。またさっきの出来事がプレイバックして、すぐ側にいる愉烏の顔をまともに見れず、頬を赤く染めたまま軽く俯いた。
そんな彼女の様子を楽しげに見ている愉烏。もちろん彼女の一連の反応は予想通り。
友梨の交際範囲が広いのは自分もよく知っている。そのうちいつか自分のもとに帰ってこない時がくるのではないだろうかと思う事がある。
だからコレは周りへの牽制。
『触れんじゃねぇ』
なんて口が避けても言えないから。
案外彼は独占欲が強いのかもしれない。
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