橘・邦彦 & 蓬莱・日和

●甘いお菓子はいかがですか?

「はーい、サンタさんのプレゼントですよ〜!」
 クリスマスの日、サンタ服に身を包んだ邦彦と日和は、子供達にプレゼントを配っていた。
 この日のために準備した、おもちゃやお菓子を綺麗にラッピングして。それを、白い大きな袋いっぱいに詰めて、ここまでやって来たのだ。
「うわぁ、ありがとう!」
「ねーねーボクにもちょうだい!」
 気がつけば、2人の周囲には大勢の子供達が集まっている。これだけたくさんの子供達がいると、プレゼントを配るのも一苦労。
「さあ、次の子にはどんなプレゼントが出てくるかな?」
 もじゃもじゃと白いあご髭をつけた邦彦は、袋の中に手を突っ込むと、ごそごそごそっと大げさに中身を漁ると、そうして掴んだ1つを目の前の子供に渡す。
 大勢の子供にプレゼントを配るのは、ちょっと大変だけど、でもそれ以上に楽しいこと。配り続けていくうちに、自然とテンションがあがっていく。
 最初は、日和と2人だけで過ごせないことを嘆いていた邦彦だったが、今では、その最初に言い出した日和よりも、邦彦の方が楽しそうだ。
(「プレゼント、足りるかな……?」)
 反対に、日和は袋の中身をざっと数えて、少しだけ不安顔。
 子供達はまだまだ大勢いる。途中で、プレゼントが足りなくなったら、どうしよう?
(「……ま、どうにかなるよね」)
 たぶん。
 根拠は無いけど、きっと大丈夫なはずだと、そう力強く自分で自分に頷くと、日和も子供達にプレゼントを配り続ける。

 やがて、2人は最後のプレゼントを配り終えた。
 プレゼントが途中で足りなくなることもなく、ちょうどいい具合に子供達へ行き渡る。
 嬉しそうに笑う子供達に見送られ、2人は空の袋を片手に歩き出す。
「あ、そうだ。日和ちゃん」
 邦彦は隣の日和を見ながら、ギフトボックスを取り出す。
 子供達にプレゼントを配る間も、大切に持っていたそれは、彼女へのクリスマスプレゼント。
「ありがとう……あ、私からもあるんだよ、邦ちゃんにプレゼント」
 嬉しそうに目を細めながら、日和も彼へのプレゼントを取り出す。
 2人はお互いに、相手からのプレゼントを大切に抱えて。嬉しくて、ちょっと恥ずかしくて……どちらも、そんな顔で笑い合う。

 中身は、一体なんだろう?
 開けるその瞬間まで、プレゼントはどきどき。
 お互いに胸をわくわくさせながら、2人のサンタクロースは仲良く並んで、帰り道を歩いていった。




イラストレーター名:あにゅ