●ほしふるよるに、だいすきなきみと
学校の屋上。
空からはチラチラとずっと小雪が舞い散っている。
雪が降るという事はとても寒いのも事実。けれども缶コーヒーで暖を取りながら普段と変わらず、他愛もない話に花を咲かせる。
そのままその日は、そんな時間が続くと思っていた。
けどそれはそうはいかなくて、真魔が少し思い詰めたような表情を見せると、ゆっくりと唇を動かした。
「なあ……駆。どうして、俺なんだ? …………駆なら…俺より、ずっといい人だって……俺の、俺なんかの、一体何処が……」
その言葉を聞いて、自分の眉間にしわが寄っていくのが良く分かった。
真魔の事は好きだ。むしろ大好きだけれども、ことある度に自分の事を卑下する、そのものの言い方はどうしても好きになれないし、ただひとつもの凄く気に入らないこと。
心配しなくたって、アンタは世界中の誰よりも輝いてる。
温かくて優しくて……だけど誰よりも強く、そして気高い。
真魔の傍に居られて、俺がどれだけ幸せだと思ってるのか。
何気ない言葉を交わせるだけで、実は心臓が飛び跳ねそうなのに。
――真魔と付き合って臆病になったのは俺も一緒。
大切だから、護りたいのに。
大好きすぎて、この手で触れる事さえ躊躇ってしまう。
『俺なんか』って言われるのは、そんな気持ちを全否定されてるような気分だ。
それは言葉にならなかった俺の言葉。
思いの丈を口にせずに、手にある缶コーヒーをきゅっとにぎって真魔を見た。その顔はきっと意地悪く笑っていただろう。
「さあ、な」
「さあ、って……」
後ろ向きな真魔の言葉には曖昧な返事と意地の悪い笑みを返した。すると真魔は困った様な表情で俺を見つめ返してくる。
だから俺は言葉を続けた。
「強いて言うなら、真魔が真魔だから、かな?」
その後、静かな時間が少し流れていった。
「……良く、判らない」
「んじゃ、判るまで俺の傍に居ろ」
静けさを先に破ったのは真魔の方。困った様などうしようという様な表情を向けてくるから、俺はぶっきらぼうにそう言うしかなかった。
けどそれだけでも、真魔には俺の気持ちが届いていたのだろうか。さっきまで見せていた困った様な表情がすぐに笑顔になり、真っ直ぐに俺に向けてくる。
「……ありがとう」
赤く染まった頬にその笑顔が俺をどきりとさせるには充分すぎる。
あーあ。と人知れずため息をついたのはきっと真魔も知らない。
ホントにコイツの事好きだと再確認、でもそれは嫌な気分ではなかった。先に惚れた方が負けって言うしな。
「ま、いーか」
そこだけ言葉に出して、相変わらず雪が降ってくる空を見上げた。
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