鷹宮・雛姫 & 二条・里奈

●もうずっとこのまま寄り添っていたい…

 幸せな余韻も消えぬままの帰り道。
 舞い降りる雪に誘われて、雛姫と里奈は同時に足を止めた。二人はお互いの顔を見ると笑いあう。
 もう少し、一緒に。
 そう二人は寄り添ってベンチに座ると、膝の上で手を握り合う。
 静かな公園の中で、そうして二人きり。
 遠くに見える街の灯りが瞬く。
 聞こえてくるのは、音なき雪の降る音。

「幸せ……」
 静寂の世界に、雛姫の声が音をもたらした。彼女は里奈の肩に頭を預けながら呟く。
「私、今日は夢のように幸せだった……。この聖なる日に、大切な人とずっと一緒だったんだもの」
 肩に感じる雛姫の存在を感じながら、里奈は静かに空を見上げる。雛姫の言葉を聞きながら、握り合った手を、きゅっと強く握り直す。
 里奈は、わざわざ言葉にしなくても、ちゃんと分かってくれる人。だけど今日は、今はちゃんと言葉にして伝えたいから、ひとつひとつ言葉にする。
「……私、里奈ちゃんが大好き。ずっと傍にいて、って」
 勇気を持って告げた雛姫の言葉は、少し震えていた。
 その言葉に誘われて、里奈は視線を雛姫に向ける。
「私は、ずっと雛姫ちゃんの傍にいる。いたい……じゃなくて、いる」
 ゆっくりと、はっきりと。里奈は言葉を紡いでいく。
 この言葉は誓いだから。
 心から誓って、この誓いは永遠になるから。
「私は、なれるかな……」
 里奈は呟く。雛姫が自分にくれる温かさ、自分はそれを包めるぐらい、もっと沢山の温かさを雛姫にあげたいと思う。
 雛姫の笑顔を見ていたら、自分に少し自信が持てて……そうできるようになろうと、心から誓う。

 里奈は、そっと雛姫の肩を抱き寄せた。
 雛姫はきゅっと手を握り返して。
 二人は微笑み合い、静かに目を閉じる。

 このままずっと一緒にいたい。
 永遠に続く夢の中に、ずっといたい。

 この覚めない、消えない夢。
 雪は溶けて消えてしまうけど、消えないものは沢山持っている。
 それは、相手がくれた大切なもの。二人でも作ってきた、キラキラ輝く素敵なカケラ。
 これからも、きっと沢山できるはずの、永遠に消えない宝物。

 だから今は、静かに、この幸せをかみしめて……メリークリスマス。




イラストレーター名:翠葉