●聖なる夜に、聖なる木の下で、2人は……。
この時期によく耳にする噂。
それは学園に伝わっているクリスマスツリーとヤドリギに関する噂。
太郎もそんな噂を聞きつけたうちのひとり。
けれども太郎はその少し癖のあるジンクスの全てを知ってはいなかった。
結那を連れてクリスマスパーティの会場の中、目当てのものを探しながら歩く太郎は少しだけ嬉しそう。
ただ太郎が聞いた噂「ヤドリギの下で告白すると成功する」には「キスをしたら」といった前提があることを太郎は知らずにいた。
ヤドリギを見つけた太郎は結那と一緒に向かう。
その途中、ぴたりと太郎の足が止まってしまった。
そうして大きく驚いたような表情で彼は、結那を見つめた後、辺りを見渡した。
「まさかここでキスをする気?」
結那の言葉に、驚きを隠せず辺りを見渡せばちらほらと人がいる。
けれどもこの想いに迷いなどないから、太郎は結那を連れて真っ直ぐにヤドリギに向かって歩き出す。
ヤドリギの下、太郎は真っ直ぐに彼女の方を見つめる。
「最初はこの感情が何か分からなかった。今までこんな気持ちになったことがなかった。だが、今なら言える」
そこまで告げた太郎の言葉が結那の言葉によって遮られてしまう。
「……永遠の愛が、とかいう噂があるのよね? でも、続きがあるのよね、これ──」
結那の言葉によって、ジンクスの全てが明かされていくと、その詳細を知らない太郎は少し狼狽するも、この胸に秘めたる想いを真っ直ぐに彼女にはっきと言葉にする。
「俺はお前が好きだ」
「後悔しても知らないわよ? ……でも、ありがと」
「後悔なんかしません」
はっきりと太郎が告げた言葉に、結那が言葉を返す。
彼女の言葉に誘われるように、彼女腰を優しく抱き寄せ、後頭部を抱きかかえる。
近くなった顔と顔、吐息がかかるほどの距離で、結那の言葉に答える太郎。
そうしてその言葉の後、二人の影は重なりゆく。
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