●ラストダンスの、その後に
瞬くのはキャンドルの灯り。
聞こえるのは緩やかなワルツの音色。
そうしてすぐそこに居るのは大好きな人。
ライにリードされながら水色のドレスの裾を翻して踊る玲。
初めてのダンスで緊張したけれども、ライにリードしてもらえて時間が経つにつれて、踊ることが楽しくなってくる。ただ少しだけ心配していたのは、初めて故に、ライの足を踏んでしまわないかと言うこと。しかしライのリードがうまかったからか、玲の飲み込みが早かったからか、足を踏むことはなくラストナンバーまで踊ることが出来た。
ほんの少しだけ、ラストナンバーが終わってしまうのが名残惜しかった。
楽しかった余韻を残して、緩やかにワルツは終わっていった。
「エスコート、ありがとうございました〜」
ダンスを終えて一息つくと、ライににこりとお礼を告げる玲。
彼女の胸元に、ライが贈った青薔薇モチーフのペンダントが揺れれば、ライはそっと目を細める。
「うん。俺も玲と踊れて楽しかった。……それからコレ、サンキュ」
玲の胸で青の薔薇が揺れると、ライは自分の手を玲に見えるように掲げる。その手首には玲が彼に贈った、青い輝石をあしらったバングルが、キャンドルの灯りに緩く光った。
互いに今日の事と、クリスマスプレゼントのお礼を言い合うと、顔を見合わせて笑った。
楽しい時間はあっというまに過ぎていく。
それはこれからの時間とよく似ていて、同じ学園内で過ごせる時間はあと僅か。
卒業後の二人の関係がどうなってしまうのか、不安がないと言えば嘘になる。
この学園にも沢山の魅力的な人がいる。それが外となったら……?
しかもライは優しい人だから、疑う訳じゃないけれども、乙女心としては不安になってしまう玲。
彼の持っている女性恐怖症が治れば良いと思う反面、治って欲しくない。複雑な乙女事情。そんな色んな想いを振り払って、玲は思い切ってライに抱きついた。
自分が彼に貰っているこの幸福な気持ちが少しでも、ライに伝わるように。
「来年も、その先も…一緒に過ごしましょうね?」
とびきりの笑顔は、今とても幸せな証拠。幸せそうな玲の笑顔はしっかりとライに届き、彼は彼女の細い体をきつく抱きしめ直す。
そうして彼女の言葉に言葉を返す変わりに、口づけを交わした。
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