●ロンリーウルフが2匹~玉砕編~
クリスマスイヴの夜、街角はこんなにも沢山の恋人達で溢れかえっている。
ときどき、友達同士でクリスマスを楽しんでいる様子のグループも通りかかるが、やはりメインはカップルなのだろう。
「………」
そんな街角の一角、自販機そばの地面に、彼ら2人の姿もあった。
その背中に、どことなく哀愁を漂わせながら、べたっと座り込む。
「……なぁ」
「ん?」
「俺達ってさ」
「うん」
「結構……イケてる方だよな?」
「……だよな」
缶コーヒーを開けて、ちびちびと飲みながら、ひかるが溜息混じりに言えば亀吉が真顔で頷く。
ああ、都会の無情な冷たい風が吹きすさぶ。
「……ああ、それなのに何故、どうして……」
また溜息1つ。
ああ、冷たい風が身に沁みる。
「どうして……女の子達は俺達の誘いに応えてくれねぇんだ!」
涙に濡れんばかりに叫ぶひかる。
クリスマスの夜、カップル溢れるこの夜を、男だけで過ごすのは悲しすぎる。
美しい華が欲しいと、ぶっちゃけナンパを試みたものの、話しかけた相手みんなに玉砕して。ようやく良い雰囲気に持ち込んだ2人連れにも、結局さらっと流されてしまった。
かくして、ああ、悲しくコーヒーを啜る男2人。
「……がっついた感が否めないんじゃねぇの?」
「うっそ!?」
「嘘」
亀吉がふと呟いた言葉にショック顔のひかる。
「……アホ」
でもすぐそれを打ち消す彼に、複雑そうな表情で呟けば「そのまま返すぜ」と切り返し。
こんな会話を繰り広げていたら、あるいは空気が険悪になるかもしれない。
だけど、今の2人は、そうなる前にただ溜息。
……だって虚しいから。
ここで喧嘩を始めたって、ただお互いに虚しいだけだと溜息をつけば、重い沈黙だけが残る。
「……はぁ、どうすんべ?」
「どっか行く?」
だが、いつまでもこうしていても仕方ない。
ここはひとつ、気晴らしにでも行こうかと、2人が立ち上がりかけたその時……。
目の前を、2人の麗しいお嬢さんが通りかかった。
「……なあ、どう思う?」
「どうって」
「……」
「……」
一瞬視線を交差させた2人は、今までの暗さを吹き飛ばすようにガッツポーズ。「よっしゃ行くぜ!」と意気高らかに彼女達を追いかける。
今度こそ、この寒い夜を乗り越えるための温もりを手にする為に……!
さてはて……。
結局、彼らが今宵どんな末路を辿ったのか……それは、あえて秘密にしておこう。そう、彼らの名誉のために。
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