藤野・沙羅 & 桜・楼心

●Liebestraume

 その日。二人にとって、特別な意味を持っていた。
 恋人になって迎える、初めてのクリスマス。
 昼は、花園でランチを楽しみ。
 夕方は、大切な仲間と一緒に、ツリーのオーナメントを飾った。
 そして、二人は夜を迎える。
 二人だけの、クリスマスを過ごすために。

「メリークリスマス、沙羅ちゃん♪」
「楼心さん、メリークリスマスです」
 ソファーに寄り添った二人が、微笑みながら小さな箱を取り出した。
 開いた箱の中にあるのは、プレゼントのシルバーリング。
 お揃いのシンプルなリングには、宝石が一つずつはめ込まれていた。
 楼心へと贈られるリングには、蒼い石。
 沙羅へと贈られるリングには、淡いピンクの石。
 二人は、そのリングを眺めながら、これまでの事を振り返った……。

 思い出すのは、二人っきりで過ごした日々。
 色々な場所へデートしたこと。
 ときには、すれ違いのような喧嘩もした。
 そして今。
 恋人として幸せな時を刻んでいる……。

「沙羅ちゃん、指輪つけてあげるわ。結婚式の予行演習と思ってね」
 冗談めいた楼心の言葉。楼心は沙羅の左手を取り、薬指にそっと、シルバーリングを通した。
(「……でも、本当にこうして、結婚式で付ける日も来るのかもしれないわね」)
 くすりと楼心は、そんなことを思いながら、沙羅に微笑んだ。
 こうして一緒にいるようになって、あっという間の2ヶ月。
 ならば結婚式も、意外とすぐに来るかもしれない。

「沙羅ちゃん……これからも、ずっと一緒にいましょうね……大好きよ」
「はい……沙羅も大好きです」
 楼心の言葉に、沙羅は嬉しさで涙を滲ませながら頷いた。
 沙羅の手で付けられた、楼心の蒼い石のリング。
 部屋の淡い光に照らされ、眩しく輝いた。

 嬉しそうに二人は、リングのついた左手を重ねる。
 その手で感じるのは、暖かな温もり。
 次に重なるのは、唇。
 相手の体温を、唇でも感じて。

 窓の外では、雪が静かに舞ってゆく。
 二人が願うのは、唯一つ。
 この幸せな時間が、永遠に続きますように……。




イラストレーター名:ことね壱花