●かまくらINかまくら。
補習を終えた万里と光雄。
「ねえ見て! 雪だよ!」
「お、いいねっ!」
ふと、二人は同時に顔を見合わせた。この雪ならきっと……。
ざっくざっくざっくざっく。
ぺたぺたぺたぺた。
光雄ががんばって、なにかを作っている。その横で暖かいカイロを頬に当てながら万里は完成するのを待っている。
そう、彼が作っているのはかまくら。雪でできたあのかまくらである。
「おーい、ばんりん。ちょっとでいいから、手伝ってくれてもいいんじゃねーのか?」
その言葉に万里はきょとんとした顔を浮かべる。
「あれ? ティルっちが作ってくれるんじゃないの?」
「……いいから手伝え!」
そう言い寄る光雄に万里は。
「そういうとこ、嫌いじゃないけどね」
しゅるりと自分のマフラーを外して、光雄の首に巻いてやる。
「おおっ!」
「ほら。がんばれ、ティルっち♪」
「おうっ!」
それだけで、光雄はやる気モードに入っていた。というか先ほどのスピードはどこへやら。ハイスピードで雪が盛られ、形作られ、数時間後には、見事にそれが完成した。
「すごーいっ! やればできるんだね、ティルっち」
「が、がんばったぞーっ!」
二人はさっそく用意したものを手に、そのかまくらの中に入るのであった。
ぱちぱちと七輪の中で石炭が燃えている。
その上には網が置かれ、美味しそうな餅が焼かれている。
徐々に餅が色付き、ぱくっと割れて膨らんでいく。
「お餅は醤油にバターに海苔だよね」
しっかり味付けの準備はできている様子。
「おーい、焼けたぞ!」
光雄の声に万里も嬉しそうに七輪に寄り添う。
「美味しそうー。じゃ、貰ってくね」
ぽいぽいぽいっと、万里の皿に焼きたてのお餅が……全部乗せられた。
「ちょ、ちょっと待てっ! 半分こじゃないのか!?」
「え? 全部私のだよね?」
「ちっがーーーうっ!!」
がーがー喧嘩をしたが、まだお餅はあるということで、今回は光雄が折れた。
「……太るぞ」
最後にぽつりと呟いて。
「ふ、太らないもーんっ!!」
どんがらがっしゃーんっ!! 七輪が転がり、その網は……光雄の顔にぶつかって。
「ギャアアア!! 焼け死ぬっ!!」
驚くこともあったけど、今はかまくらの中で仲良くお餅をぱくり。
光雄の顔には網目状の火傷が残っていたのだった。
| |