●一緒にいられる幸せ
蛍と夜半はお互いが作ったキャンドルを見せ合った。
蛍が作ったキャンドルは中を黄色、周りに紺色の蝋を流し込み星や月の形に削ったもの。
夜半は周りが黒く、中が赤。火を灯すと段々と赤が浮き出てくると言った代物である。
お揃いの紅茶を飲みながら、お互い真っ赤になってしまう。
2人とも似たようなキャンドル――同じことを考えていたことに恥ずかしさ、さらには嬉しさも感じる。
「ほら、夜半。落ち着いて顔上げて、な」
と蛍はにっこりと夜半に笑顔を向けた。
はいと蛍の言葉に素直に応じる夜半。けれど、その返事は蛍の口付けによって、消されてしまった。
さっきの紅茶と同じ、少しスパイスの効いた甘みを感じる……。
蛍は悪戯っぽく笑みを浮かべて。
「たまには、こんなのも良いだろ? クリスマスなんだしさ」
夜半はキスされて、頭の中は真っ白。
頬も熱く火照り、赤くなっている。
「ほら、こっちに来いよ」
蛍は自分の膝の上をぽんぽんと叩いた。
(「うう、なんだかちょっと緊張するのです……」)
こくこくと頷いて、蛍の膝にのそのそと座る夜半。
夜半のどきどきする鼓動は、蛍の耳に届いているのだろうか?
膝に乗った夜半を後ろから抱きしめ、蛍は耳元で囁いた。
「これから色々大変になるだろうけど、夜半の事はこうやって、俺が全部包み込んでやる」
その言葉にこくこくと頷く夜半。蛍からは見えないが、真っ赤になっている夜半の顔は幸せそうな笑みに包まれていた。
「辛い事とか、苦しい事とか、全部包み込んで暖かい灯を燈してやる。ずっと傍に居て、夜半を護る。来年も再来年もその後も、ずっとこうして一緒にいよう」
その手に一層の力を込めて、蛍は夜半を抱きしめる。
夜半も蛍の腕を抱きしめながら、真っ赤になりながらも。
「ありがとうです……嬉しい、です。りん先輩、大好きですっ」
信じてもいいのかな?
明日また会えるって来年も一緒にいられるって。
信じても大丈夫なのかなって……。
その夜半の小さな不安を消してしまうかのように、蛍の腕は心強く感じる。
優しくて暖かいぬくもりは、夜半の心に安心という暖かい光を灯す。
二人の側には、似たような二本のキャンドルの炎がゆらゆらと揺れていた。
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