●雪空の下と夜景の上で
さっきまでの喧噪が嘘のような学校の屋上。
夜になってしまえばひっそりと静かだった。
屋上のもっと上を目指した二人は今は給水塔の上。
ただ静かに瞬く眼下のクリスマスツリーの灯りを眺める。
振り返るのは今年の後半、一気に仲良くなれた出来事。
小さな事がとても嬉しかったり、楽しかったり。
お互いに彼女と仲良しになれて、とても嬉しいと思っている。
そんな二人の頭上に白いものが降ってくる。
「あ、雪だ! アリスちゃん、寒くない?」
「……そうですね、少し冷えます」
チラチラと小さな粉雪が空から舞い落ちてくる。
ドイツの山奥で育ったアリスは雪にはなれているけれども、小さく微笑みながら春菜の方を振り返る。
するとぎゅっと春菜がアリスの体を後ろから抱きしめた。
「雪ってアリスちゃんみたいだよね」
「……そう……でしょうか?」
アリスの小さな体を抱きしめたまま、言葉を続ける春菜。その言葉に春菜の方を振り返り不思議そうな顔のアリス。
銀色で小さなアリスを見ていると、そんな気分になってしまい、かわいくてついつい撫でてしまう。
そんな春菜をアリスは不思議そうに見つめる。心の中では春菜は変わっているなと思うものの、大人しく撫でられている。
撫でる春菜に撫でられるアリス。
言葉はなくてもなんとなくそんな事が嬉しかったりする。
細かい粉雪はチラチラと変わらず空から降り続ける。
キラキラ輝くクリスマスツリーにも、明るい街にも、静かになった学校にもそれは平等に降ってくる。
「ホワイトクリスマスだね! メリークリスマス♪」
「えぇ……メリークリスマス」
これがホワイトクリスマスということに気がついた春菜は、ぎゅっとアリスの体を抱き直した後、近い耳元で楽しそうにメリークリスマスと言う。
それにアリスもはにかんだような笑みを浮かべて答える。
下を見ればあふれる光。
上を見れば冷たく白い雪。
その間で少女たちは小さく楽しげに笑い合う。
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