●ハプニングと記念日と〜聖夜の祈り〜
今日はクリスマス。それ以上に特別な記念日。
昨年の今日、透夜から栞へ告白し、付き合い始めた最初の記念日。
折角だからとパーティー会場にやって来たものの、慣れないパーティーと、普段と違った雰囲気に緊張して……。
でも、二人で過ごすパーティーはとても楽しくて、あっという間に時間が過ぎ去っていった。
「それじゃ、そろそろ帰ろうか栞ちゃん。送っていくから」
「はいですよ〜」
クリスマスパーティーも終わり、栞を送っていくという透夜。
元気に返事した栞の格好を改めて見て、思わず見惚れてしまう。自分を真っ直ぐに見る透夜の視線に、少し気恥ずかしそうに俯く栞。
「……わ、ちょっと雪積もったんですね〜。これで今年もホワイトクリスマスですね〜」
恥ずかしさから逃げるように、栞は辺りを見渡すと、うっすら雪が積もった道に一歩踏み出した。
「うん、すごく綺麗……かな?」
「綺麗ですよね〜。雪が光を反射して……きゃ!?」
でも透夜は、雪がうっすらと積もった幻想的な景色よりも、目の前でドレスを翻してこちらを振り返る栞の姿の方が魅力的だった。彼女の姿に釘付けになっていると、雪の上を歩いていた栞が、バランスを崩して転びそうになる。
「栞ちゃんっ! ……っとと」
とっさに両手を出して、透夜は転びそうな栞を抱きとめる。
抱きとめられた栞が透夜を見つめる。
透夜も、自分の腕の中の彼女を見つめ返す。
そのまま二人は、互いの体をしっかりと抱きしめ合う。
「大丈夫だった?」
「……ぇと、ありがとです」
腕の中の栞を覗き込む透夜に気付いて、栞は少し赤くなりながら答える。
そんな彼女の様子を見ながら、透夜は思わず口にしていた。
「その……また来年も、こうやって一緒にクリスマスを楽しもうね?」
来年も彼女と一緒にいたい。
だから、少しだけ先の約束。
優しいと共に、透夜の顔が栞に近づいていく。
至近距離まで近付く二人の顔。それはあっという間に重なって……。
「あ……え、えっと、はいです」
その瞬間、栞は小さく頷くと、彼の唇を受け止めた。
また来年も一緒に、この日を迎えられるよう密やかに祈り、二人の厳かな夜は過ぎていく。
| |