●聖夜憧憬〜Merry Christmas〜
クリスマスイブ当日の銀誓館学園では、沢山のパーティが開かれていた。
その中から、雷と刹那が選んだのは、ケーキとお茶以外は全て自分達で持ち寄って開くというパーティだった。
教室にはアンティーク調の小物が揃い、皆の手で喫茶店風に装飾されている。一角にはグランドピアノまで運び込まれて雰囲気を醸し出し、窓の近くには、雷と刹那が持ってきたクリスマスツリーが置かれていた。
窓の外には小雪がちらつき、幻想的な風景が広がっていた。
テーブルの上にはケーキと紅茶が並ぶ。
美味しいケーキとお茶を味わいながら過ごすクリスマスは、とても心地よいものだった。
そんな中、雷は自分たちが運んできたクリスマスツリーに視線をやると、そのまま、笑顔で刹那に向き直った。
「ほら、やっぱり誰も持ってこなかっただろ? クリスマスツリーを持ってきて良かったな♪」
「そうね……正解だったわね……」
上機嫌なのがすぐに分かる口調で、得意げに話しかける雷。しかし、そんな上機嫌の雷と違って、刹那はどこか呆れたような口調で、静かに紅茶の入ったカップを傾ける。
(「全く、かっこつけたがりなんだから……もう」)
そう思いながら、静かに吐息を吐き出し、もう一度カップを傾ける刹那。
しかし当の雷といえば、そんな刹那の機嫌の悪さや態度には全く気付かないまま、ただ彼女の言葉を受けて、更にまた上機嫌に笑う。
「はは、そうだろうそうだろう♪」
その軽快な笑い声は、静かな喫茶店の中に響き渡る。
そんな雷の様子を見ていた刹那は視線を伏せて、また吐息をひとつ。いつまでも不機嫌でいたら、自分だって楽しくない。
それに……目の前の雷が楽しそうに笑っているのに、何となく心がほどけていく。
「もう、雷ったら……」
相変わらず笑い続けている雷の声に、他の生徒達の視線が集まる。それに気付いた刹那は恥ずかしさに少し照れてしまうものの、さっきまでの不機嫌さは嘘のように消え去って。
くす、と笑顔を浮べながら、刹那は雷を見つめるのだった。
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