●懲りすぎたケーキ
「ふむ、大は小を兼ねる……ですね。立派なケーキを作りましょうっ!」
「ふふっ、私はこれでもここの甘味亭の店長なのですよー。すごいケーキを作りましょーね、姉さんっ!」
ここは大きく豪華なケーキを作ろうと意気込む水無瀬と、結社の厨房で大きく拳を突き上げる荏徒。
そうして二人でのケーキ作りが始まった。
小麦粉をふるって。
卵を割って。
出来た生地を型に流し込みオーブンに入れれば、程なくして良い香りが漂ってくる。
焼き上がりと共に出来たのは、ふわふわで大きなスポンジ。
「んー……ここはこんな感じ……でしょうか」
「うん、そこはそれでいいんじゃないです?」
まずは荏徒がスポンジを半分にスライスし、コレでよいかと水無瀬に向かって首を傾げると、うんうんと頷く水無瀬。これにクリームを塗って、イチゴを挟み込む。
荏徒が前もって泡立てておいた生クリームをボウルからパレットで掬い取り、スポンジ台に均等になるように塗っていく。
その表情は いつになく真剣。
半分にしたスポンジにクリームが塗り終わると、今度は水無瀬がイチゴをのせていく。
「荏徒さんっ、さっきから苺ばっかり食べてませんか?」
「………………いえいえ、気のせいですよー」
クリームが塗り終わって、イチゴを挟もうとした水無瀬が、なんだかイチゴが沢山減っているような気がして荏徒に尋ねる。確かにつまみ食いをしていた荏徒だったが、ここはさりげなく素知らぬふりをしてみる。それが通じるかどうかは分らないけど。
「あっ、荏徒さん、頬にクリーム付いてますよ」
「えっ……どこ? どこっ??」
「とってあげましょーか?」
イチゴを手に取った水無瀬が、荏徒の頬にクリームがついているのに気がついた。
水無瀬の言葉に慌てて頬に手をあてるが、それはちょっとお門違いな場所で、何とも言えない笑みを浮かべた水無瀬が荏徒の頬に指をあてとってやる。
そんな風にケーキ作りは和やかに進み。
イチゴを挟むと今度は、全体のデコレーションへと移る。
絞り袋から押し出されるクリームが、ケーキを可愛らしく彩っていく。
あれやこれやと話をしながら、作っていくケーキ。
和菓子で作った沢山の人形達がケーキの上でダンスを踊る。その人形達の中には、サンタはもちろん荏徒や水無瀬に似たものや、骨の人形までありとても賑やか。
最後にチョコレートで「Merry Christmas」と書けばクリスマスデコレーションケーキのできあがり。
夢中で作ったケーキは予想以上にとても大きなものに仕上がって、二人は困った様にそれでいて、それが楽しいのか笑い合って顔を見合わせた。
「……ところでこれ作ったはいいですけど、どうやって食べます?」
| |