染雪・荏徒 & 浦泉・巻

●ヘヤノスミス

 薄暗い部屋の片隅で、二人は小さく体育座りをしていた。
 側にはぼっきり折れたクリスマスツリーの残骸。
「ね、ねえ……」
「き、きかんといてーな……」
 荏徒と巻は、互いに震えた声で話し始めた。
 どうしてこうなったのかはわからない。
 暗がりの中、どうして、震えているのかはわからない。
 けれど、これから恐ろしい事が起きる……そんな気がする。

 外では楽しいクリスマスパーティーが色々な場所で行われている。
 結社の仲間達と楽しいパーティーを。
 恋人と、静かにムード溢れるパーティーを。
 学園のみんなと派手に騒いで、踊ったりするパーティーを。
 なのに、どうして?

 二人は同時に思っていた。
(「どうして、こんなのことに……?」)
 この状況から逃れられる術はないのか?
 二人はガタガタと震えながら、なおも考える。
 いや、もし、ここから逃げても、状況は変わらないのでは?

 そう思ったとたん、馴染みのある切ない歌を思い出した。
 思わず、口ずさんでしまいそうになる。
 けれど、歌ってしまったら、きっと、全てが終わる。
 そんな気もする。
 二人はまだ、ガタガタと震えている。
 そして、まだ誰にも見つかっていない。
 やっぱり逃げようか。
 それとも、このまま隠れていようか。

 遠くで、楽しげなクリスマスソングが聞こえた。
 けれど、荏徒と巻の耳には届いていないだろう。
 二人はしばらくの間、その暗がりの部屋でがたがたと震えていた。




イラストレーター名:吉江ユタカ